第5話 桜の森の満開の下:坂口安吾

桜の木を恐れる盗賊のちょっぴり怖い恋話


太宰治あたりと同時代の作家、坂口安吾の代表作のひとつ。昔、白黒時代に映画化もされたそうな。


起:光の無い真夜中に、うっすらと白い首を垂れるような桜の木は、昔の人にしてみれば、なんだか不気味な植物だった。ある山賊の頭領もまた、桜を恐れる者の一人で、怖いもの無しの彼でも、真夜中には、桜が咲く通りを避けて歩いた。いつも通り、街に出て暴れ、女を連れ去ろうとする盗賊。その時、盗賊は、その女の美しさに魅了され、身も心も支配される側となる。

承:彼は、自分の妻達を殺し、女の欲しがる生首を調達するために人々を殺した。女の我儘に頭を悩ませる盗賊だが、あらがえず、言われるがままだ。そして、彼女の願いを聞き入れ、彼は愛する山から、街へと引っ越す。

転:しかし、盗賊は街の生活にどうしても馴染めなかった。ついに我慢できなくなり、女を捨て、山に帰ろうとする。すると、出会って初めて、女の方が折れ、一緒に山に帰ることになった。満たされる盗賊の心。しかし、帰り道、桜の森の満開の下に、彼は迷い込んでしまった。

結:省略


面白ポイント①:厨二病感ただようタイトル

→なんか、カッコつけてる感じしませんか?「わたしは海を抱きしめていたい」等、坂口安吾作品には、厨二病を感じさせるタイトルの作品がちょくちょくあります。ちょっと、読んでみたくなりませんか?


面白ポイント②:エログロファンタジー

→内容は前衛的なB級ホラーといったら、言い過ぎですが、エログロ要素満載です。エログロと厨二、、、この二つは、基本概念的には対極にあると考えることが出来る気もします。厨二は、ザックリ言うと世間知らずな若者の純粋さ。エログロは、汚れた大人たちの穢れ。そんな概念を表現する言葉、演出だと思ったりしたりしなかったり


結:この2つの概念が、この作品内で絶妙に混ざり合っています。それは、普通はあり得ないことです。奇妙な事です。不気味な事です。美と恐怖が両立しているのです。それは、まるで暗闇の中で、ぽわっと白く光る桜の様なのです。


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