第5話 『REverse』

そんな生活をして数週間。

俺はすっかり有名人になっていた。


俺が事件を解決すれば人は押し寄せて感謝を告げるし、

事件の後始末に来た警察は俺に敬礼をし、感謝の言葉を述べる。


いつの間にやら俺を信仰する人や、勝手に親戚名乗りをする人、

果てはグッズやら名物やら、ファンクラブまで出来上がっている始末。


色んな評価が飛び交っていたものの、とりあえずは肯定的な意見が多かった。

街に出歩けば子供が尊敬と憧れの目で見てくる。


……正直、期待を背負わせすぎではなかろうか。


そんなこんなで俺と織田は毎日のように報道を見ている。


「いやぁ〜、……なんかすっかり有名人だね……」


「ほんとだよ。」

「そうだろ!?オレ、カッコイイだろ!?」

「……リヒト。ちょっと静かにしてくれないかな。」

「……ちっ。」


「あはは、頼もしいなぁ。

君みたいな正義の味方と友達になれて僕も嬉しいよ!

……なんで柊真くんって人を助けたいの?」


「んー?俺か?まあ……

困っている人がいたら見逃せないだけ、かな。」


俺にはまだ分からない。

でも、少なくとも助けを求める人がいるなら、それに答えてやるべきだと俺は思う。


「そうなんだ、へぇ〜、かっこいいなぁ!

……んー、でも話してる感じ……

君もちょっと不思議な力が使える以外は僕達人間と同じなんだなって思ったよ。

特別な力を使うまでは僕と同じ普通の人だと思ってたし。」



そこまで言うと、織田は少し押し黙ったあと、口を開いた。


「すっっっっごいお節介なこと言うんだけどさ

……大丈夫?……1人で無理してない?」


「いや、俺もキツイんだよ……こういうのって、アンチとかどうしても少なからず出るし。」


「うーん、そうだよね。

…………なんか、ひとつわかった気がするな。

僕も君を"ヒーロー"だって盛り上がっちゃったけど……

話してみたら、普通の高校生だなって。

ちょっと特別な力を持った、

『悩んで、葛藤する人間』なんだなって。」


「……そうか?」


「うん。でさ、もしもの話だけど。

柊真君って、元の人間に戻りたくないの?

もしも"なれるよー"とか言われたら、なんてさ。

魔女の〇急便とかでも魔法が使えなくなる展開とかあるしさ。」


「魔女の宅〇便はわかんねぇけど……まあ、戻りたいとはたまに考えるさ。

でも、なっちまったものは俺は仕方ないと思う。」


「……そっか。

…………僕さ、何度か作品を編集社に持ち込んだりとかしたこともあったんだけど、どの作品も『薄っぺらい』って言われちゃってたんだよね。

その理由がようやく分かったよ。」


「分かったって?」


「僕が理想と仰いでいたヒーロー達だってきっと君と同じ、人を助けながらも、悩み、葛藤し、孤独に嘆く同じ人間だ。

僕はそんな彼らの、かっこよく人を救う表層ばかり書こうとしてた。

だから薄っぺらいって言われちゃってたんだなぁって。」


そこまで言うと、織田は笑顔でポンと手を叩いた。



「ふふっ。じゃあ決めた。僕はそんな君を最前線でサポートするよ!

"正義の味方の味方"……っていうの?素の君を知ってるのは僕だけだしっ。

……なんかほら、愚痴とかあったら聞くからね!

今の世間の盛り上がり方、ちょっと柊真君にはプレッシャーになりそうだなとも思ったんだ。」


「ああ。サンキュ。でもお前の方こそ無理すんなよ?」


「うん!……あ、じゃあ僕、ご飯作ってくるね!」


そう言って織田は台所へと去っていった。


「厄介な事にならねぇといいがな……」


ぼそりとリヒトは呟いた。

……面倒事とか起きなきゃいいけど。




続く

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DX3rd『オンリーロンリーヒーローズ』リプレイ小説 アルフィンユア @alfinyua7

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