第4話『Situation to start moving』
俺は何とか上手く逃げていた。
家に帰ってもいいが、最悪テレビに顔が映っている可能性もある。
もしかしたら家を特定されているかもしれない。
それに、俺の頭のどこかが告げるのだ。
―――――織田と別れるべきではないと。
とりあえず織田の家に帰ろう。
多分ここで兄さんに電話しても事態が面倒になるだけだ。
「ただいまー。」
帰りついた頃には昼頃になっていた。
「あっ、柊真くん……!おかえり、なんかすごい事になってるよ君!」
帰ってきていた織田が興奮した様子で出迎えた。
テレビを付けてみれば、さっきの騒ぎがニュースになっていた。
映像にはぼやけてはいるが、ガンダム姿の……知らない人に見てもロボアニメに出てくる何かが映っているし、廃墟内に入っていく俺の姿も見られていたらしい。
『N市に謎のヒーロー現る!?』
『廃墟で暴れる未知の化け物を華麗に打倒!?』
『超能力は実在した!謎の人物の正体は一体?』
ニュースやワイドショーでコメンテーターや専門家が俺についてある事ない事を考察している。
「……やっぱり、騒動見ちゃった感じか?」
「帰り道、スーパーの周りが大騒ぎになってて何事かと思ったよ。
それでニュース見たら君が映ってるんだもん、驚いたなぁ」
「あー、そうか。まあ、あんなにカメラに捉えられたらなぁ……
……やっぱり、家に帰れそうにないなぁ……」
俺は肩を落とした。
LI〇Eを見れば、兄さんからニュースの事に関して連絡が入っている。
とりあえず適当に返事を返す。
「君さえ構わないなら、とりあえずしばらくは僕の家に居たほうが良さそうだね……」
「いいのか?」
「もともと一人暮らしだし、僕は構わないよ。」
「……俺がここにいるってバレたら、まずくないか?」
「んー……まあ、見られちゃった以上は仕方ないけどさ。
でも君は、危ない事が起こるのを阻止したくて動いたんでしょ?
それは偉い事だなって僕は思うな。」
「そ、そうなのか……?」
正直俺は複雑だ。こんなふうに祭り上げられてしまって。
なにか悪いことにでもならなきゃいいが。
「人が助けられたのは事実だし、テレビだってそれを分かってるから君の事悪く言ってないみたいだし。
……少なくとも僕は、柊真君の事偉いし、勇気があってすごいなって思うよ。」
「そうか……」
「かっこよく変身してる柊真くん、本当にヒーローみたいだった!」
「あ、ああ……そうか。嬉しいよ。」
織田は相変わらず目をキラキラさせている。
でも、何か本人も思うところがあるようだ。
なにはともあれ、今の状況が異常なのは確かだ。
(んー……ワーティングが効かない、で思いつくのはアンチワーティングファクター、AWFだけどなー。)
(でもよ……柊真、普通ならあれ単体用だろ?)
(しかも街だけじゃなくて世界にまで効果が広がってるなんて……)
(ああ。なんかきな臭くなってきたぜ。)
それ以降、ジャームの仕業か、超常めいた事件がいくつも起こるようになった。
話に聞いた、まるでレネゲイドが入ったばかりの頃の日本のようだ。
……もちろん、一般人だけじゃどうにもならない。
犠牲者はたくさん出ている。
その度に俺に助けを求める声が上がった。
俺としては助けに行かない訳には行かない。
UGNの無い世界で、ジャームを放置すれば被害が広がるのは確実だからだ。
そうして俺は、たくさんの事件を解決して回った。
バスに囚われた人、ジャームのせいで眠りにつかされた集団、病院のジャック事件……
そんな中、ある事件の一つの事だった。
ジャームにとどめを刺そうとした時だ。
『キミは、どウしテ戦uの??
キみは一人、ナのニ
仲間モ、組織モ命令モ、無イノに??』
そうジャームは語りかけてくる。
「……は?どうして、って……
そりゃ、助けを求める人がいるなら、助けてやるのが道理だろ。」
『君モ 一緒 僕らト オナジ。
今にワカル 君モ こッチ、来る』
「……は?」
ジャームはクスクスと笑った。それを最後に動かなくなった。
……どういう意味なんだろう。
俺がいずれはジャームになりうるという意味だろうか?
……しかしわざわざ言うことか?
そんな俺の疑問をよそに、
民衆たちからは感謝の声がかかる。
「化け物をやっつけてくれてありがとうヒーロー!」
「かっこいいー!」
俺は被っていたフードを被り直し、その場を後にした。
〜続く〜
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