世界タイムマシン同盟

議論

「ナポレオンってのは、何をした人だっけ」

「月に最初に行った人に決まってるだろ」

「いや、それはアインシュタインだよ」

「それは、人造人間を初めて完成させた奴じゃないか」

「それはアレキサンダー大王」

「大王というくらいだから、王様だろう。全世界を最初に統一した……」

「そりゃそうだけど、そのかたわら、兵器もいろいろ発明してたんだ。そのおかげで大王にもなれた」

「そうだったかなぁ。じゃあ、ほかに何を作った？」

「原子爆弾さ」

「それはシェイクスピアだろ」

「それは小説上の人物。たしかあれは、ハムレットが書いた……」

「そうだっけ？いや、ちがうよ、たしか白河久明」

「誰だい、そのしらかわってのは。聞いたこともないぞ」

「へへ。俺も知らない。なんかの拍子に覚えたのかな」

「そいつが、シェイクスピアとどういう関係なのかな？」

「へへ。ちょっと口に出してみただけ」

「冗談か。ふざけんな！真面目に議論してる最中に」

「やぁ、ごめんごめん。でも、どっちにしても、シェイクスピアを書いたのは違うぞ。たしか、聖徳太子が書いたはず」

「そうだそうだ。たしか、聖徳太子ってのは、リンカーンに殺されたんだっけな」

「うん。怒った友人のケネディが、かたき討ちだ、ってんでリンカーンと撃ち合いをして」

「そうそう。あれでガリレオが仲裁に入らなけれりゃ、二人のうち、どちらかが死んでいたところだった」

「で、ガリレオはその仲裁でかなり時間を食われちゃって、おかげで、そのころ研究をしてた相対性理論をエジソンに先を越されてしまったんだよね」

「ちがうよ、相対性理論は、ナポレオンじゃないか」

「ナポレオンは月に最初に行った……」

　議論は、延々と続く。現代の歴史があやふやになるほどの、遠い未来での話。