あかないぞ

 深夜。大富豪の家。暗い部屋。金庫の前。

 彼は、金庫にぴったりと耳をつけ、ゆっくりとダイヤルを回していた。

 カタッ。小さな音が。

「やったぞ」

 小声でつぶやく。そして、扉に手をかける。中に、どのくらい入っているのだろう。これだけの家だ。札束ぎっしり、宝石どっさり……

 が、引っ張ったが開かない。おかしい、この手のダイアル錠なら、いまのでロックは外れたはずだ。

 引いてもだめなら押してみた。それでもだめ。横にずらすのかと思ったが、そうでもない。首をひねりながら悪戦苦闘を延々と続けていると、

 警察が入ってきて、たちまち手錠をかけられた。大富豪が出てくる。

「残念だったな。その金庫のスイッチは、これなんだ」

 と、金庫の反対側の壁の一角をずらすと、スイッチが出てきた。

「じ、じゃあ、金庫についてる、このダイヤルは?」

 大富豪、ニヤリとして

「ふふ。分かるだろう。警察直結警報装置のスイッチだ」

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