あーこわかった

「こわかったなぁ」

「ああ、恐ろしかった」

「お前は、どんなところが怖かった?」

「ううん、それが覚えてないんだ。でも、こわい番組だった」

「俺も覚えてないけど、あんな怖いテレビ、初めてだ」

「そうだ、あの番組、録画しておいたんだけど、見るかい?」

「見る、見せて」

 で、レコーダーを操作して、

「……これだ。さあ、再生するぞ」

 妙な音楽ととともに、画面が妙な図形を描きながら、規則的にパターンを変える。

 だんだん意識が遠くなる。

『……さあ、これから六十分間、あなたを恐怖の世界に招待します。この、恐ろしい、地獄の底から湧き上がってきた番組に、あなたは段々吸い込まれていく。段々……』

 テレビの前の二人は、もう意識がほとんどない。

 声は、少し間をおくと

『さあ、これからの六十分間、あなたは、私の合図があるまで……』

 そして、こう続く

『勝手に怖い夢でも見てろ』

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