MEGANĒ

 エス君が道を歩いていると、メガネが落ちていた。目が悪いわけではないが、何となくかけてみたくなる。拾って、かけてみると、大きさはぴったり。

 おどおどとあたりを見渡す。持ち主らしい人も、エス君を咎めるように見る人もいないようだ。

 エス君はメガネをかけたまま、その場からあわてて逃げた。

「ふう。ここまでくれば大丈夫だろう」

 で、つぶやく。

「いいメガネだな。よく見える」

 このメガネ、気に入った。レンズ越しに見ると、あたりはいつもと別世界。

 さて、そろそろ外すか。

 と、メガネに手をかけると、なかなか外れない。

「おかしいなあ」

 むきになって強引に引っ張る。と、メガネはやっと外れたはいいが……

「うわー!」叫び声をあげた。メガネと一緒に、目玉が二つとも取れてしまったのだ。


 メガネは、目玉をかけたまま、逃げると、呟いた。

「いい目玉だな。よく見える」

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