雨の生き方
@pixy0001
第1話記憶の始まり
まだ始まったばかりの学園生活。教室ではカッコいい人、かわいい人の話で盛り上がっている。耳を澄ませば・・・いや、耳を澄まさなくても、どちらの話題にも一人の名前が頻繁に出てくる。その名前はレイン。どっかの国の王子だの、どこどこの姫だの、噂話が絶えない。俺はどっかの国の王子でもなく、どこどこの姫でもない。そもそも男だ。教室に来るまでに男子にもジロジロ見られた。その俺の名前は、「はじめまして、名前はレインと言います。どうぞよろしくお願いします。」普通だ。自己紹介で変に爪痕残そうとして失敗したら、その後の学園生活が悲惨なことになる。「苗字は?レイン何って言うの?」同じ教室の女子がそう言った。「苗字はありません。というよりわかりません。育ちがいいわけではないからですかね。」俺がそう答えた後、教室の雰囲気が悪くなった。ざわざわしていた教室が沈黙につつまれた。すると、先生が慌てて、「じゃあ、次の席のレネットさん自己紹介お願いします。」レネット。見るからに普通じゃない。教室の中の誰よりも肝が据わっている。ちなみに俺の年齢は6歳だ。自分で言うのも何だが、所謂早熟と言うやつだと思う。それの代償なのか記憶の一部が欠けていて、親の顔がわからない。わからないのか、知らないのか。俺が生きているのだから親がいるのは確かだと思うが、親が生きているのか死んでいるのか、苗字もわからない為、誰かに尋ねる事もできない。記憶があるのは、なぜ知っているのかわからない事や、同い年の妹がいる事とよくわからない施設で暮らしていたという事。今は妹と宿を転々として暮らしているが、妹も親の記憶が無い。どうも普通じゃ無いと思ってはいるが、俺は今の暮らしに満足している。人には言えないが、腐った大人たちのおかげでお金にも困っていない。妹も俺に対し文句は言いながら、なんだかんだで一緒に暮らしているからいろいろ大丈夫だと思う。何が大丈夫かはわからないが、多分色々大丈夫だろう。「はい、みんな自己紹介したところで今日は終わりにします。明日からみんなで仲良く勉強していきましょう。」先生がそう言ったのが聞こえた。
「あ、レ何とかと他の面々の自己紹介聞くの忘れた。まあいっか。」レ何とかとはあんまり関わらないようにしよう。あとあんまり目立たないようにしよう。そう心の中で誓った時、何人かの生徒が「先生、魔法の勉強はいつぐらいからするの?」と聞き出した。すると先生が「何言ってるの?魔法の勉強は18歳になってからしかしてはいけないのよ。みんな知ってるでしょ世界のルールだから。」
俺の頭の中には?が浮かんだがあまり深く考えなかった。そろそろ帰ろうとしたその時、誰かが話しかけて来た。「ねえレイン君、ちょっと良いかな。話があるんだけど。」振り向くとそこにはレ何とかがいた。面倒ごとに巻き込まれたく無いから、「ごめん、妹と待ち合わせているんだ。また明日ね。」少し冷たくしてしまったが、こう言う場合はいい感じに嫌われた方が良い。嫌われ過ぎると虐められる可能性があるし、嫌われなさ過ぎると話かけて来られる。だからこそ良い感じに嫌われる必要がある。良い感じにが大事なポイントだ。これも残った記憶の一部の、なぜ知っているのかわからない事の一つだ。カバンを持って帰ろうとした時、「記憶が無いんだー。親の事だったり自分の事だったり。・・・ね。」笑いながらレ何とかがそう言った。
「君、名前なんだっけ。」無意識に聞いていた。「レネットよ、覚えといてね。君だけは僕に警戒心を示した。上手く隠そうとしていたけど僕にはわかるよ、君の事ならある程度はね。僕と関わりたく無いと思ってるでしょうけど、気が変わったら声かけてね、きっと関わり合うことになるけど。」レネットはそう言って立ち去ろうとしたが振り返って、不敵な笑みを浮かべてこう言った、「君のこと好きだよ。僕ね君みたいに中性的な子がタイプなんだ。君みたいにかわいい子をあんな事したりさせたりするのが堪らなく唆るんだ。でもクズな大人達に近寄るのはあんまりして欲しく無いな。僕にああゆう事してくれるのなら良いけどにゃ。」こいつは俺より俺のことを知っているかもしれない。いや、俺達のことを。俺の仕事の事まで知ってやがる。変装までしてるのに。やはり気をつけないとこの女と思ったら、「じゃあまた明日、レイン君」と笑いながら立ち去った。何者なんだあの女?「女だよな?」モヤモヤした気持ちを晴らすべく、隣のクラスの妹を迎えに行った。
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