第28話 追放侯爵令嬢様は強い4
幼女に魔物は討伐したと報告すると俺達は村を後にした。
本来なら回収する魔石屑は畑を穴だらけにしたお詫びにその場に置いてきた。
その辺りは村長が上手いことするだろう。
魔石ほどではないが魔石屑もそこそこ金になるのだ。ゴールデンオーガは大きな魔物なのでそれが三体分なら畑の補償分としては十分だろう。
まあ一体分はそれほど残っていなかったが。
「それにしても村長はあのままで良かったのですか?」
「冒険者ギルドに対しての依頼の件?」
「ええ、そうです」
村が見えなくなった所でエリカが村長の嘘について尋ねてきた。
「証拠は無いからな、冒険者ギルドに言った所でって奴さ」
「あの少女の父親の証言は?」
「あれは俺達相手だから言っただけだよ、ギルドから訊かれたらシラを切るさ」
村長がやった事は冒険者ギルドの善意を裏切る行為だ。
冒険者ギルドは危険な魔物が発生したとギルドが把握した場合は自主的に討伐依頼を出す。
それは冒険者ギルドの理念がそうなっているからだ。
冒険者ギルドの掲げる力なき者の為に魔物を討伐する、というのは理想ではあるが張りぼてのお題目なのではないのだ。
「それに言い出したらキリがないしな」
農村の生活は楽ではない。
同じような事をしている村や集落は多い。
ギルドもそれを分かっているので告発した所で流されるだろう。
冒険者にも冒険者ギルド職員にもそんな農村出身者は多いのだ。
「貴方がそう言うのなら」
大したこだわりも無かったのかエリカがそう言って締めくくった。
*
予想外に村で一泊するという事態になった上に依頼も失敗なので本来なら大失敗も良いところなのだが。
「あの……これはその……」
冒険者ギルドのカウンターで、ゴールデンオーガの魔石三つを前にギルド職員の女性が唖然としている。
ちなみに俺達の冒険者登録を受け持った小柄な女性職員である。
胸の名札によるとラナというらしい。
「ゴールデンオーガの魔石だな」
そう本来なら大失敗だが俺達にはゴールデンオーガの魔石が三つある。
ギルドが買い取ってくれる金額だけで十分な報酬になるだろう。
「緊急討伐対象じゃないですか!」
ギルド職員、ラナが叫んだ。
魔物から採取される魔石はだいたいが見た目で強さが分かる。
ギルド職員なら見慣れているだろうに、何をそんなに驚いているのか。
「買い取りを頼みたいんだが」
とりあえず要件を伝える。
冒険者ギルドは冒険者から魔石や魔物から取れた素材の買い取りを一手に引き受けている。
ギルドはその魔石や素材を商人に売る事で儲けている、ギルドの主な収入源だ。
「何でそんなに冷静なんですか!三体ですよ!?ゴールデンオーガ三体をランク1二人で討伐ですよ!?」
なぜか怒られる。
「ま、まさか」
ラナが身をよじり、とんでもない邪悪を見たと言わんばかりの顔をする。
「ゴールデンオーガ三体の討伐をもって特例でランク7にしろと言うつもりですか」
「言いません」
まだ言うのかそれ。
「それより俺達が受けた依頼なんだが」
ちらりと魔石へと視線を向ける。
「たぶんだけど取り下げられると思うよ」
それだけでラナが、成る程みたいな顔をする。
「それは大変でしたね」
労ってくれはするが深くツッコんではこない、察してはいるものの問題にする気は無いのだろう。
「あの村には私の親戚がいるので、個人的にもお礼を言っておきます」
「だったら買い取り価格に色を付けてくれ、俺の剣が駄目になったんだよ」
それとこれとは話は別ですねー、とラナはさらっと流す。
「ですが剣を新しく買うのでしたら良い店があるのでご紹介しますよ」
報酬の色としては十分か、何せ俺達はこの街では新参だ。
ギルド職員からの紹介なら下手な店では無いだろう。
「じゃあ、それで買い取りを」
「分かりました」
鑑定の為の魔道具と書類を用意しながらラナが恐る恐るといった感じで言う。
「本当にランク7にしろと言わないですよね?」
俺はそれに肩をすくめるだけで応えた。
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