弐章

 俺は恋をした。全く別世界にいる彼女を好きになってしまった。これは罪ではない、宿命だ。一目惚れだ。本当に好きなのだ。


でも、彼女と目が合いそうになったときには、よく外の景色を見た。実際その景色よりも彼女のことを見ていたいし、知りたいのだが、恥ずかしさと照れくささが勝ってしまう。


 俺があの子を好きになったのは、1年生の秋のとある日に起こった出来事である。おそらく彼女にとってはそんなに覚えていない些細なことだろうが、俺ははっきり覚えている。


俺が、母の愛情たっぷり弁当を忘れて、初めて購買でパンを買おうと思ったとき、俺は極度にコミュニケーションが取りづらいため、購買のおばちゃんとの対話であたふたとして、後ろの方でかなりの長い列ができ、周りの生徒たちに多大な迷惑をかけてしまった。


そのとき、後ろにいたのがあの子であった。彼女は俺を心底惨めだと思ったのだろう、彼女が俺とおばちゃんとの媒介役をしてくれた。彼女のおかげで、俺はこのミッションを成し遂げた。


そのときにはすでに俺は一目惚れしてしまったのだろうか。


俺はその後、感謝の言葉を伝えようと少し待っていたが、みじめで哀れな俺から話しかけられるのは気持ち悪いと思うはずだと決めつけていたために俺はそのままに自教室に戻った。


そのときの自分はかなりネガティブな性格であった。それは紛れもなく勇気がなかったと同義であろう。


でも、今の俺にとってはこの出来事を後悔している。


なぜ勇気を出さなかったのか、とその後の俺は自問自答を繰り返す日々であった。


誰かが言っていた、『後悔する人間は勇気がないから、後悔するのだ。何事にも挑戦が大事!』。


俺がこの言葉に出会ってもう一度彼女と再会するのは、2年のクラス替えのときである。


 その時にもう一度、あの時の感謝の気持ちを伝えようと思っていたが、彼女は俺とは別世界の人間だと気付いた。


そして、その勇気は消滅した。


しかし、俺は何か変な感情をそこで抱く。まるで人を好きになったようなそんな気分に陥る。ごもっともそうであろう。初めてこんな感情を抱いたときは普通、現実逃避をするかもしれない。


でも、俺は違う。俺は宿命だとあっさり受け入れることができた。ただ勇気がない。俺は何度か告白を試そうとした。


けど、それは妄想だけでの群像劇にすぎない。


 そして、卒業間近のある日、俺たちクラスメートのもとに一つの訃報がやってくる。

彼女が事故で亡くなった俺の恋の終末

 彼女と仲良くやっていたグループはもちろん、泣きじゃくる。友人が1人失ってしまったのだ。俺はいつも1人で生きてきたから、仲間を失った時の感情がイマイチわからなかった。


でも、今はわかる。この喪失感というものは俺をこんなに絶望の底へ叩きつけるのだと感じた。先生もこの話をするにつれ、かなりの勇気があったのだろう。それはとても偉いことだ。


でも、俺はまた彼女に伝えることができなかった。俺の恋は終わってしまった。


 その後、彼女の葬式にクラス全体で参列することとなった。あまりにも早すぎる卒業別れにより彼女の家族、親族一同は悲しみの渦に漬け込まれ、同級生たちはとても仲良くやっていた人たちも別に仲良くやっていなかった人たちも悲しみの世界へ誘うのだ。


俺たちが求めていたのはこんな卒業じゃない。誰もがそう思うはずだ。この後悔はこれからも一切拭えることはできないだろう。


 君を愛することができて、ありがとう...

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