第22話

 それから、里見以外の人とも付き合った。同性。男。

 

 

 自分から出会いを求めて、この人ならと思って何人かと付き合った。

 

 

 でも、長くは持たなかったし、僕は相手を。

 

 

 

 

 

 一度も家に招くことが、できなかった。

 

 

 

 

 

 段々とそういうのも煩わしくなって、必然的に仕事しかなくなって、人付き合いは出版社の編集者ぐらいしか居なくなった。

 

 

 同窓会も、1回天候事情で急遽中止になってから、やらなくなった。なくなった。

 

 

 

 

 

 そんな時だった。

 

 

 もう何年もそんな風に過ごしていたとき。

 

 

 こうやっておじいちゃんになっていくのもありだよねって何かを諦めたときだった。

 

 

 

 

 

 僕はいつも郵便配達に来る子に話しかけられた。

 

 

 

 

 

 挨拶はしていた。

 

 

 仕事の合間の休憩。気分転換にと庭に出るタイミングで来る郵便配達だったから。

 

 

 

 

 

 って言うのは、嘘、で。

 

 

 

 

 

 待ってないよ、なんて言いながら、僕はずっと待っている。待っていた。同窓会を。案内が来るのを。うちの住所はいつも幹事をやってくれているやつに知らせてあったから。

 

 

 もしかしたら。

 

 

 もしかしたらって。

 

 

 

 

 

 そんなもしかしたらが、あるはずなんて、ないのに。

 

 

 

 

 

 里見。

 

 

 

 

 

 名前を聞かれて、郵便配達の子の名前を聞いて、そこから。連想ゲームのように里見に辿り着いた。

 

 

 里見の名前をはっきりと思い浮かべたのは久しぶりだった。

 

 

 昔のことをこんなにもはっきり思い出したのも。

 

 

 

 

 

 考えないようにしていた。

 

 

 同窓会があったら、とは、思っていたけど。それ以外は。それ以上は。

 

 

 

 

 

 考えたら恋しくなる。

 

 

 考えたら悲しくなる。

 

 

 考えたら。

 

 

 

 

 

 里見。

 

 

 

 

 

 懐かしさが一気にこみ上げて来て、僕は夜を待って出掛けた。

 

 

 美浜公園に。

 

 

 あの頃。まだ幼かったあの頃、雨さえ降っていなければ毎日通ったあの。

 

 

 

 

 

 里見。

 

 

 

 

 

 お前は見てる?

 

 

 今日のこの空を。星を。

 

 

 

 

 

 僕は見てるよ。

 

 

 いつもは家の庭からだけど、今日はお前を思い出したから、ここ。美浜公園だよ。

 

 

 

 

 

 待ってない。

 

 

 お前を待ってるんじゃない。

 

 

 お前が幸せにやってるなら僕はそれでいい。

 

 

 僕もそれなりに幸せだよ。

 

 

 

 

 

 そんな言葉たちは、未練がましい僕の、精一杯の嘘。

 

 

 虚勢。

 

 

 

 

 

 里見。

 

 

 

 

 

 せめてきちんと終わらせたかった。終わらせて欲しかった。

 

 

 ピリオドがないから、どこかで、僕はお前を。

 

 

 

 

 

 車の鍵を、僕は握った。

 

 

 車の鍵についている、小さな、てのひらサイズの。

 

 

 

 

 

 ………天球儀を。

 

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