第5話
1ヶ月はあっという間に過ぎ、毎日提出していた夜空観察の宿題は終わった。
終わったのに。
終わったけど。
僕と里見は観察を続けた。
楽しくて。
何がだろう。
何に楽しいと感じていたんだろう。
何でそんなに夢中に。
それは今となっては分からない。
今になっても分からない。
でも、楽しくて夢中になって、提出する必要のない夜空観察を、僕たちはずっと続けた。
提出しなくていいからと、自由に書いた。
紙はお金を半分ずつ出し合って100円ショップで買った。
その紙に毎日17時半に月と見える星を描いて、次の日の学校で色をぬったり、イラストを加えたり、図書室で星の本を借りて調べたことを書いたりした。
ある日それがどこからか先生の耳に入って、見せて欲しいって言われて見せた。
僕たちはクラス全員の前で褒められた。
クラス通信として配ろうってことにまでなった。
星空通信。
次の日から僕と里見の仕事になった。
それがきっかけにもなって、少しずつ里見にも話す男子は増えていった。
でもまだ時々からかわれてた。里見は。
一緒に居る僕も、一緒にからかわれることがあった。
ちーちゃんとまーちゃんは仲良しだなって。
男の格好してるけど、ふたりとも実は女なんじゃねぇのって。
里見は僕にごめんって言った。
僕の右側で。小さく。
俺のせいで夏目まで。
全然。
全然、気にならなかった。気にならないよ。
だって里見は僕が初めて秘密を打ち明けた友だち。
初めてここまで仲良くなれた友だち。
里見が僕の右側に居てくれるなら、からかわれたって大丈夫。
言った僕に、里見は笑った。
ありがとうって。
………笑った。
そして僕たちは毎日見上げた。
空を。夜空を。月を。星を。
四年生、五年生、六年生。
僕たちの観察は続き、僕たちふたりは新聞に小さく紹介された。
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