第3話
教室に一緒に居るからと言って、最初は特に何かを話すということはなかった。
僕は本を読んでたし、気の利いたことを話せる性格じゃない。
そしてそれは里見も。
女子に囲まれていたのはそれこそ最初だけ。
無口なのか苦手なのか、あんまりしゃべらない里見に、つまんないって言っている女子を見かけたことがあった。
窓際の一番後ろ。
そこが里見の席。
海が近いこの学校の窓からは、海が見える。
里見は飽きもせず、それを見ているようだった。
僕が里見と話すようになったきっかけは、宿題。
日が暮れるのが早くなって、涼しい風がちょっと冷たく感じるようになってきた10月。
出された宿題は、1ヶ月の夜空観察。
月と星の観察だった。
毎日日が沈んだ17時半に、同じ場所から月と星の観察をする。
ひとりでやると習いごとや、体調が悪いこともあるだろうし、さぼってしまうかもしれないからいう理由で、その宿題はなるべく家が近い者同士でペアを組んでやるようにと言われた。
僕と里見が最後まで残って。
僕は里見とやることになった。
そしてその日、その宿題をどこでやるか、で。
僕は初めて里見と話した。
「海でやりたい」
「………え?」
「俺、海でやりたい」
どちらかの家か、お互いの家の真ん中ぐらいでやるのがいいね、なんて、先生が言っていた。
だから家がどこか聞いてって、思っていた僕に、里見は言った。
「じゃあ、
砂浜と海がほど近い公園。
海、じゃ、観察位置が曖昧すぎるから、と僕は言った。
「美浜公園?」
「うん。海のすぐ近くだから。いい?」
「………いいよ」
それから、里見と一緒の毎日が、始まった。
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