第2章第030話 追加工事発注です

第2章第030話 追加工事発注です


・Side:ツキシマ・レイコ


 夕食後に領館の食堂でまったりしていると、調査から帰ってきた技師さんから質問攻めです。皆さんご飯食べました?

 あれはまだ撃てるのか? 威力の調節は出来るのか? 等々。


 昼間の射撃は成功でしたが。 今後の安全のためにもう少し崩しておきたい所や、でかい岩が残っていて撤去に難儀しそうな所等、簡単に破壊できるのなら今の内に撃っておいて貰いたいところがあるようです。


 王都から来たらしい技師さんのリーダーらしい方が、聞いてきました。

 大穴をいくつか繋げて一気に街道の基礎を掘れないか? というものです。他の技師さんもそのアイデアに賛同しています。

 現場を見てきた技師さんが、崩れた瓦礫の撤去などの作業量が甚大になりそうだという見積もりを持ってきていました。なら、それらも一気に吹き飛ばして欲しいという依頼です。


 目標のすぐ近くでは撃つと私自身が巻き込まれるので、穴を掘るのならそこを見下ろせる場所が必要などの条件を説明したところ、技師さん達はその辺の検討に入りました。




 次の日も、現場に駆り出されます。

 まずは、最初の射点から狙える範囲で残った岩山の危険部位と、取り除くには難儀しそうなサイズの岩を指定されましたので。出力を落してのレイコ・バスターです。はい、特に問題も無く、目標達成です。

 …まだ見物人が来ていますね。昨日ほどでかい爆発はもう無いですよ。もうさほど危なくないから別に良いのですが。


 さらに次の日のお昼頃です。

 件の街道は、"谷"と言うこともあって、問題の岩山の反対側にも低めの山があります。その山の上からの谷への視界に邪魔な木を切ってもらって、目標地点に旗を立てて貰い。今回はその山の上に作った櫓から狙い撃つことになりました。人手が多いからか、準備の作業が早いですね。

 目標は4カ所ほどになりそうですが。今日はまず、一発でどれくらい掘れるのかの確認のために1カ所だけということです。クレーターを作るのが目的ですので、威力は初日の半分くらいでいいでしょう。


 射点の山に登ってきました。手順は初日と似たような感じで、旗の人も一緒です。ここまで昇ってきてご苦労さまです。

 周囲は森ですので。念のためレッドさんに索敵をして貰い、人がいないことを確認します。…大丈夫ですね。


 ドカーン!


 直径三十メートルほどのクレーターが出来ました。

 技師さん達が戻ってきて、くわしくいろいろ測っています。


 クレーターだけで街道作るわけにはいきませんが。街道を整地する手間がなるだけ省けるようにと、この最初のクレーターを参考に残りの目標が決定されます。ほぼ等間隔であと4カ所お願いされることになりました。


 次の日は、連続で四カ所を一気に爆破します!。発破かけていきますっ!。


 …と言いたかったのですが。レッドさんの索敵に反応があります。危険範囲に、人が入り込んでいるようです。森の影から、目標地点を直接見ているようですが。爆風と破片もそこに行きますよ?

 旗信号で一旦中止を知らせて貰いますが、詳細は旗では連絡できません。私は一旦山を駆け下りて、警備の騎士さんに知らせます。レッドさんから場所は丸わかりなので、その隠れている人はすぐに捕まりました。

 どうも王都の方から来た商人さんのようで、単に近くで見たかっただけ…とは言っていますが。命令無視の作業妨害犯です。街の衛兵に連れられていきました、しっかり絞られて下さい。


 このせいで作業は一時間くらい遅れて、私は再度射点の山の天辺へ昇ります。。

 もう指の照準器にも成れたので。試射無しで一気に行きますよ。


 ドカーン! ドカーン! ドカーン! ドカーン!


 ふむ。山の上からは良い感じでクレーターが繋がったように見えます。

まぁ土砂が消えて無くなるわけでは無いので、クレーターを掘ったというよりは、クレーターで均したと言った方が正解なのですが。木の伐採や根堀をする必要が無く、不必要な穴を埋め戻すだけでそこそこ平らになりそうです。

 本日の結果には技師さん達も満足してくれたようで。これで工期が大幅に短縮できそうだとのことです。


 と言うわけで。私の出張土木工事は四日ほどで片づきました。




 領館に戻ると、アイズン伯爵とマラート内相が揉めています。私への報酬の話だそうです。そう言えば、事前に取り決めしていませんでしたね。

 まぁどの程度お役に立てるか未知数でしたし、ギルドでの依頼書にも、拘束期間の日給保証くらいしか決まっていなかったようですが。


 「四日の仕事に、その額は持って行きすぎですよ!」


 「何を言っておる! 工期短縮に、街道の早期再開でどれだけ金が浮くと思ってるんじゃ!。お主が出した最初の工事の見積もりを、ワシが知らぬと思っているのか! それに比べれば微々たるもんじゃろっ!」


 カステラード殿下もあきれた風に二人を見ていますが。


 「国から報償も出るから、期待しておけ」


 うーん、お金は多分、一杯々々です。

 とは言っても、欲しいものと言えば… 醤油、カレー粉、チョコレート…って、私は食欲魔神か?

 …本気で願うならインターネット欲しいけど。まだまだ遙か未来の話。


 「レイコ殿、見学の中に妖しいのがいたのに気がついたか?」


 商人に扮した他領や他国の人間。こういう情報も商品にしている商人。そういうのが結構いたそうです。あの捕まった商人も、露骨にスパイだったそうです。

 そういう人間らに、いろいろ紐を付ける事が出来たと喜んでますね。


 「…もしかして、それを誘い出すのも、この工事の目的ですか?」


 「街道の復旧が最優先なのは確かだ。あの岩には手の出しようが無くて頭を抱えていたからな。ただまぁ、やることが決まったのなら、状況は効率よく使えるだけ使えってことだな」


 一粒で二度美味しいですか。…キャラメル、作りたいな。材料揃っているし、作れるよね? アーモンドの入ったやつ、お父さんが好きだったなぁ…


 「あいつらを泳がせておけば、レイコ殿のあの力も勝手に国内外に示威してくれるからな。レイコ殿がこの国にいる限り、十分抑止力として役立つだろう」


 一粒に二度どころではありませんでした。

 うーん。知らぬ間に軍事利用されていようですが。まぁ、ダイナマイトもどのみち、工事か爆弾かなので。私が兵器と見なされても致し方ないのかもですが。


 むーという表情をしていると、カステラード殿下に頭を撫でられた。


 「まぁ、国の安全の役に立つって事で、勘弁してくれ」


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