第2章第029話 再度レイコ・バスター
第2章第029話 再度レイコ・バスター
・Side:ツキシマ・レイコ
タシニ村の崖崩れの現場にて。私は今、指定された射点にいます。高さ二メートルくらいの岩がここにありまして、そこに背中を預ける感じで撃つ予定です。発射の反動がと言うよりは、照準がぶれないようにするためですね。
岩の裏には、私へ指示や見学場所との旗信号のやりとりをする技師さんが退避する予定です。岩はむしろ、この人のためですね。そこなら輻射も大丈夫でしょう。
レッドさんは、この岩の上で見ていてもらいます。
射点からさらに斜め後方五十メートルくらいの所に設けられた貴族の方達の待機所、そのそばに一般向けの見学所があります。
岩が爆発したときに破片が飛んでいく可能性は、皆に話してありまして。頭を下げるなり、盾で防ぐなりする予定です。貴族席の人は、兵士達が使うヘルメットも被っています。よしっ!
うーん、見学所には結構人が集まってますね。こちらも、自前のヘルメットや盾を持参している人も多いです。
見学所からさらに後方の道脇には、軽食の屋台やら即席の木の盾なんかの販売所が出ています。ほんと、商魂たくましいです。
さて。
本番の手順として、まずはガイドメーザーを三発を撃ちます。これで岩を崩すことは出来ませんが、弾本体はこれに沿って飛んでいきますので、着弾点は分ります。照準のズレをチェックしてから、見学所の方に警告を出して、本番射撃となります。
街の教会のお昼を知らせる鐘が鳴っているのがここまで聞こえます。それでは作戦開始です。
右手を前に出し左手で右肘あたりを支えます。L字にした親指と人差し指の節を照準器の代わりにします。
正直、かなり大雑把な照準しか出来ません。腕に銃を仕込んでいるアニメやゲームのキャラって結構いますけど、あの人達どうやって精密な照準しているんでしょうね? レイコ・バスター用に右腕に付けるスコープ、本気で考えたくなりました。
「試射一回目、行きます!」
技師さんが旗で貴族席の方に合図を送ります。この段階では、まだ退避は必要ありません。
パン!
周囲にプラズマ化した空気が膨張する衝撃波が響きます。 山彦も響いていますね。
目標の岩に、ポスンと煙が立ちますが。…結構ずれましたね。
技師さんが、目をこらして
「右に五ベメル、下に六ベメル 」
と指示を出してくれます。
後ろの岩の上に待機していているレッドさんも、同じような修正を報告してくれています。なかなか目の良い技師さんです。
「試射ニ回目、行きます!」
パン!
今度は、一メートル以内に着弾。ほぼ思ったところに命中です。今度は技師さんも、OKを出してくれました。
指の照準器での位置を良く覚えて、念のため予定通り三回目も撃っときます。
「試射三回目、行きます!」
パン!
うん。問題ないようですね。
「なんだあんなものなのか?」
と、ガッカリしたような声が見学席から聞こえますが。次が本番ですよ。
ユルガルムで撃ったときと同じくらいの威力で、右腕にチャージ。
「本番行きます! 岩の後ろにいて下さいね」
旗で貴族席に本番注意の指示を出した後、技師さんは後ろの岩に隠れます。
貴族席の方で、警告の鐘がカンカンカンと鳴らされます。
「レイコ・バスター、発射します!」
パン!
音は相変わらず軽いですし。着弾点も相変わらずポスンと白煙が出る程度ですが。
直後。着弾点に亀裂が走って岩肌が膨らんだと思ったら、亀裂から爆炎が吹き出し岩全体に広がります。衝撃波が白い幕となって飛び散るのも見えました。
地面からガガガと振動が届いた後、すぐにドカンッ!という全身を同時に殴られるような衝撃波が届きます。
爆炎はすぐに黒煙に変化し。周囲の大気を巻き込みつつ上昇したそれは巨大なキノコ雲となり、成長していきます。
周囲の山に反響したゴゴゴゴという音と、破片が落ちるゴツゴツという音が、続いています。
見学所の方まで危険なほどの破片は届いていないようですが。ほぼ全員が防御の姿勢を取っています。…なんか静まりかえっていますね。
しばらくして周囲の粉塵が晴れ、キノコ雲が風に流されていくと、件の岩はきちんと崩れているのが見えてきました。任務完了です。
「ご苦労じゃったな」
貴族の待機所に戻ると、アイズン伯爵がねぎらってくれました。
見学者達は、まだいろいろ騒然としていますね。
技師の人たちは、早速現場の確認に走って行きます。崩れやすいところとかまだ危ないかも…と思いましたが。まぁそのへんは彼らの方がプロですね。危ないところには行かないでしょう。
カステラード殿下は、腕を組んで何やらニヤニヤしています。悪巧みですか?
人に向けては使わないですよ、これ。
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