第1章第044話 料理チートじゃ!
第1章第044話 料理チートじゃ!
・Side:ツキシマ・レイコ
ミオンさんの旦那さんで、ファルリードの宿主で、食堂のコックである、カヤン・キックさん。
セクシーグラマーなキャットウーマンを射止めた、元護衛職のカヤン・キックさん。
そのカヤンさんが、地球の料理をなにか教えてくれないか?と言ってきました。
この宿の人たちは、私の正体については大まかに知っているけど。私の見た目が見た目だからね、普通の子供と同じように接してくれています。
私が、大雑把に遙か彼方の国からやってきた…と言うことを知って、なにか新しいメニューがないものか興味を持ったようです。
普段から厨房にもおじゃましているし、市場にも通ったので。この国の食材については結構把握できましたので、試してみますか料理チート。
とはいえ。お米とかカレー粉とか醤油とかがあるわけでは無いので、選択肢は少ないですけど。
色々熟慮した結果、アジ(っぽい魚)のフライ、タラ(っぽい魚)のフライ、マヨネーズからのタルタルソース、そしてプリン、行ってみようか! 豚カツも良いけど、ボア肉だとお値段もお高めになるので、次の機会です。…でも、マグロっぽいクローマのカツってのは、すっごく贅沢かも、試してみたいですね。
魚は、普通に北市場に水揚げされている物から、使えそうな処を仕入れました。安定して入手できる材料ってのは、食堂には重要な要素です。
木の実から絞ったという植物油、大っきな卵、酒から造ったビネガーも手に入りました。前部結構いいお値段だったけど、今日は特別。この辺のコスト計算は、後の課題ですね。
卵は鮮度にこだわったよ。洗ってあって、当日生まれたと保証してくれたところから買いました。年のため、後でレッドさんに分析して貰いましょう。
砂糖も手に入りました。真っ白では無く三温糖みたいだけど。舶来物なので、金貨が飛ぶ値段でした。まぁこれも今回は特別。
牛乳。…瓶というかカメというか。入れ物を持参して、市場に連れてこられている真っ黒な牛さんから直接いただきます。文句なしの新鮮度。
「モーラ、値段控えておいてくれよ」
カヤンさんが指示しています。原価計算は、大事です。
…モーラちゃん、計算できます。アイズン伯爵の施政の成果ですね。
でかい卵、味が心配でしたが。試しに一つを割ってみて少量をスクランブルエッグにして見たところ、鶏卵よりコクがあって美味しいくらいでした。十分使えます。
同じ卵でも、ウズラの卵とかはなんかボソボソしてあまり好きじゃ無かったんですよね。
まずはマヨネーズからです。時間かかりそうですからね。
卵の黄身を溶いて、黄身1に対して油4とビネガー1を混ぜて攪拌します。攪拌機がないので、臨時に竹串を束ねた物を使います。あれだ、茶道で使う茶筅。それでも重労働で、助手さんがヒーヒー言いながら混ぜてます。黄身の黄色さが薄くなって、含まれる空気で白くなるまでただひたすら攪拌します。
…良い感じになったところで、塩胡椒で味を調えて、マヨネーズの完成!
「これはおもしろい…今まで食べたこと無い味だ」
カヤンさんが味見します。気に入ったようだね。
混ぜるのが足りないと油っぽくなるので。マヨネーズの出来はいかに混ぜるかにかかってます。…そのうちミキサーなんか開発したいところです。
タルタルにするには、ゆで卵を刻んで…だけど。この大きさの卵を茹でるのは難儀なので、先ほど味見でスクランブルエッグにしたものを細かくして混ぜるよ。あと、野菜の漬物も刻んで混ぜます。これけっこう大事。
フライは、まだ簡単ですね。
前日の残りの堅くなったパンからパン粉作って。魚を小麦粉と卵につけてパン粉付けて、油でジュワーと。
油はこの国にもあるけど、こういう使い方するのは知らなかったそうです。高価な油を大量に使うことになりますし、ボアのラードにしても冬場には貴重なカロリー源なので、小麦粉に混ぜて焼いたりと、食べる方がメインだそうです。
…うん!、良い感じに揚がりました。
ソースですが。ウスターソースに似た感じなのが港ソースという名前で既にあります。別に海産物で出来ているわけではないですが、いろんな野菜と、輸入ものの香辛料のうち庶民でも手が出る安めのものを使って熟成させたもので、エイゼルの港街が発祥だそうです。
これを煮詰めながら、丁寧に炒めた玉ねぎっぽいもののみじん切りや、果物を擦ったものを入れて甘めに味を調えます。目指すはとんかつソース。アジフライの方はタルタルよりこっちが合いそうですからね。タラのフライの方は当然タルタルで。
マヨネーズを作った後に余った卵白が勿体ないので。砂糖と混ぜてメレンゲにして、メレンゲクッキーにしてみました。泡立てるのは相変わらず助手さんがヒーヒー言っていましたけど、レシピ自体は簡単です。こちらはデザートにしましょう。
油があるので、塩とビネガーと刻んだ香草に玉ねぎを混ぜてドレッシング。まぁ、サラダと言ってもざく切りしたキャベツもどきとスライスした玉ねぎもどきにかけただけですが。マヨネーズより合うかなと思います。
プリンも簡単です。
溶いた卵黄に牛乳に砂糖。これを適当なサイズのカップに入れて、水を張った鍋に並べて、蓋をして蒸すだけ。熱しすぎると"す"が入るので、注意。上手く出来るかな?
バニラがあれば完璧だけど、あるとしたら、舶来物を扱っている港の倉庫の店かな? あそこに入るには、紹介状が必要だとかで。今度ジャック会頭に相談して見ましょう。
途中わけで。厨房で試食タイムです。
宿の面々と従業員、アイリさんにタロウさん、エカテリンさんと、エカテリンさんから噂を聞いた料理騎士さん。
昼間は非番のはずの料理騎士さんは、作るところから来てましたけど。仕事中では無いので無問題だそうです。
「いただきますっ」
私が手を合わせると、皆が不思議そうな顔をした。
「いただきますってのは、私の国での食事の時の挨拶でね。まぁ神様とか作ってくれた人とか感謝って意味ですね」
「うん、シンプルで良いね。真面目なお祈りだと結構長くかかるからね」
みんなが真似して、いただきます。
アジとタラの方は、お薦めのソースは指示したけど。この辺はお好きにどうぞ。
カヤンさんは、まず何も付けずに一口かじります。サクっサクっと確認するように噛み締めていた。そして次に、ソースやタルタルを付けながら、味わっています。
「これは旨いな。衣のサクサク感と、魚の身の柔らかさのコントラストが面白い。香ばしい風味も最高だ。なによりこのタルタルソースの濃厚さ!これは凄いぞ」
とカヤンさん。
「こんな料理方法やソースがあったなんて。材料費はともかく、作り方は簡単。これは壁の中でも流行りそうだな」
と料理騎士さん。壁の中ってのは貴族街のことですね。
…簡単なのと苦労しないは別なのですが、特にマヨネーズ。まぁ貴族街なら人出はなんとでもなるのでしょう。
「うんまっ! なにこれうんまっ! 魚がこんなに美味いなんて! こんなの食べたこと無いぜ!」
シンプルな感想のエカテリンさんです。
アイリさんは、何やら考え込みながら食べてます。
レッドさんには、私がパンを使ってサンドに。フィッシュバーガーですな。召し上がれ。
みなさんガツガツと、あっという間に完食です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます