第1章第045話 プリン、作れます
第1章第045話 プリン、作れます
・Side:ツキシマ・レイコ
次は、デザートをいただきます。水で冷ましておいたプリンと、メレンゲクッキーです。
「レイコちゃん! このレシピ、売ってくれ!」
一口食べたタロウさんが叫ぶ。
「いや。なんとかこの菓子のレシピを独占したいが。最低でもレシピの保全はしないと。教会へ奉納するって、食べ物の場合はどうすれば良いんだ?」
「十年前くらいの話だけど、どこかの貴族が輸入した菓子を独占するために、教会の祭司様方を招待して食事会開いて、それで奉納したことにした…って話を、どこかで読んだ記憶があるわ」
アイリさんも同じ事を考え込んでいたようだ。
「なによこれ!こんな美味しいお菓子、食べたこと無いわよ!。貴族様達が普段どんなお菓子食べているのか詳しくはないけど。これなら王都でも騒ぎになるんじゃない?」
怒らなくても良いじゃない。…なんか話がでかくなってきましたな。
「いや、貴族街でもここまでのお菓子は無いと思いますよ。うーん、この宿屋では奉納は難しいでしょう。これも伯爵案件にしますか?」
と料理騎士さん。
私とレッドさんは、メレンゲクッキーをポリポリ。こっちも美味しいですよ。
バニラが無いし、あまり冷やせてないので、完璧なプリンとは言い難く。周囲のテンションにちょっと引いてます。
あ、カラメル作るの忘れてた。
教会への奉納とは、要は特許登録みたいなものらしいです。
教会に喜捨と一緒に奉納すると、教会に喜捨の記録として残る。少なくともこれで、誰が最初に作ったという話で揉めることは無くなるというシステムです。神に奉納された物を、奉納した者に無許可で作ったりするのは教会を敵に回すような物だから、勝手に使えなくなります。特許料みたいなのは個別相談だそうですけど。
喜捨が必要なのか?とも感じるけど。喜捨が多ければ上位の教会に情報が複写され。それによってずっと広範囲かつ厳重な登録になるそうです。小さい教会一つだけだと、書き換えられたりなんて心配があるので。複数の教会で記録されるにこしたことがないけど。それなりの額の喜捨が必要だとか。
「たしか会頭は、今日はギルドに来ているはずだ!」
タロウさんが、慌てて飛び出し、祖父であるジャック会頭を呼びに行きました。
材料は余っているので、待っている間に足りない物を追加で作りましょう。
…一通り食べたジャック会頭が一言。
「任せなさい」
うん。ファルリード亭でも作れるようにしてくれるのなら、お任せします。
余った材料のうち、日持ちしないものは、その日のうちに使い切り、臨時メニューとして食堂でもお値打ち価格で出しました。たまたま食べられたお客さんはラッキーです。
砂糖とか油とかは、カヤンさんに全部渡しました。ちょと固辞されたけど、私が持っててもしょうがないからね。
モーラちゃんの原価計算によると、あれらを常設メニューにするには、コストが高いです。セットで食べると、普段のメニューの十倍くらいかかるそうです。中央通りの店なら、問題がない値段なんだろうけどね。
カヤンさんは、ブツブツと考え込んでいます。普通に食べられる値段まで、いかにこれらの味を落とし込むか。
乞うご期待。
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