第1章第042話 覇王様再び
第1章第042話 覇王様再び
・Side:ツキシマ・レイコ
朝です。
隣に泊まっていた護衛騎士が、ファルリード亭に出勤してきたエカテリンさんに引き継ぎをして部屋に戻っていきます。これから一眠りだそうで、ホントご苦労さまです。
アイリさんとタウロさんもやってきました。宿に早朝出勤状態で迷惑じゃ無いかな?とは思ったのですが。ギルドの支払いで朝食が食べられるのだそうで、むしろ喜んでいるとか。まぁこの時代の一人暮らしでは、朝食は買った方が早いでしょうし。ここでの食事は美味しいですからね。
今日は運輸協会ことギルドへ向かいます。そこの一室が講義会場です。
教室というよりは、会議室かな? 十五人くらいの子供達が集まっていました。見た目私より年上の子ばかりかな?
その中の女の子が一人、アイリさんのところに寄ってきます。
「アイリお姉ちゃんも、今日ここでお勉強?」
「私は、今日はこの子の付き添いね。仲良くしてあげて」
「レイコです。よろしくね」
「ミーティアって言います。私もよろしく」
うーん、小学校を思い出すなぁ。
ミーティアちゃんは、私の肩の後ろから覗いているレッドさんに気がつきました。
「わー、その子なに? かわいい? ワンちゃん…にしてはちょっと変?」
「クー!クー」
レッドさんは、変とは何だと抗議しております。
「この子はレッドさんね。この子もよろしく」
「角と尻尾? まるでドラゴンね。…まぁいいか、かわいいし」
まるでどころかドラゴンそのものですが。
赤竜神の姿は、教会で絵姿を皆が見ているはず。護衛の騎士が付いている事で、いろいろ忖度してくれたようです。ミーティアちゃん、空気も読めます。
ドラゴンですよ!。見かけたらもっと周りが騒ぎそうですが。
昨日アイリさんにそのへん聞いたんですけど。赤竜神はこの世界の創造神でもあるけど、破壊神でもあるんだとか。魔女の帝国を滅ぼしたのは赤竜神だという説もあるそうですし。敬う存在ではあるけど、同時に畏れる対象でもあるので、積極的に敬愛するというのとも、ちょっと違うんだそうです。そんな存在が目の前にポンといても、「キャードラゴンよーっ!御利益ちょうだい~!」と騒ぐというのは無理だとか。
あと、騎士がいることで既に伯爵が動いているのは察しが付くので。だったら適度の距離感で…という感覚らしいです。皆空気が読める人ばかりです。
それでもミーティアちゃんは、レッドさんを抱っこしたそうだったので、渡して上げました。
ああ、そんなギューとしたら…まぁその程度ではなんともならないけど。もうちょっと優しくね。まぁ、レッドさんは可愛いから、しかたないけどね!。
としているところで。講師がやってきました。
水牛みたいな角を付けたごついヘルメットを被った大柄な男性。肩やら脛には、棘のついた防具を着けている…って、いつぞやの覇王様じゃん! 横モヒカンの二人も一緒だ。
「皆良く来た。本日、護衛業についての講義をするラウル・オーバンだ。運輸護衛業を初めて八年。まだ生きていて、これで食っていけているというのが、最大の実績だな。どんな仕事でもそうだが、生きて食っていけているというのは、一番重要なことだ。私の八年の経験をこれから話すわけだが。自分に向いているかどうか、その辺の判断材料になれば幸いである」
「ちなみにアニキは、可愛い奥さんとガキも三人いるぜ。その辺もあやかりたいよな!」
横モヒカンが、ヘルメットの上から殴られてます。生徒からは笑いがこぼれる。漫才要員ですか?
まずは座学です。
講義と言っても、覇王様の人生談に近かったけど。どういう目論見でこの世界に飛び込んで、運輸協会にどう登録して、仕事を選ぶ基準についてとか契約について等々。ギャラや拘束期間の話あたりはむしろ切実で、目先のお金に釣られると損をすることもある等、失敗談はむしろためになりますね。
道中の食料や水代を、後になってからぼったくり価格で請求されるなんて話もあるそうで。そのときはギルドの方で契約を精査してくれて助かったんだそうだ。
ちなみに、奥さんは護衛対象だった商会の娘さんだそうで、キャラバンで知り合ったんだそうです。
今は、お金の管理などで覇王様を助けているんだそうで。うーん、その辺も人生計画だよね。あやかりたい横モヒカンが、また小突かれてました。
次に、警戒対象となる野生動物や魔獣について。
非魔獣で恐いのは、あのボアや熊。この辺は護衛というよりは狩人的な話かな。
狼や虎は、まず人を襲わないそうです。頭が良いので、人を襲うリスクを良く理解しているのだろうという話です。…虎、出るんだ…
魔獣ともなると、元がどんな動物でも恐ろしいとか。本来草食の鹿やウサギまで凶暴化すると侮れないそうで、油断すると大けがすることもだそうです。ボーパルバニー、実在するんですね。
薬草等の採取系の仕事についてもいくらか話してくれましたが。生兵法は怪我の元、興味がある人は専門の講義を受けるようにと言われました。
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