第1章第041話 明日からの予定
第1章第041話 明日からの予定
・Side:ツキシマ・レイコ
アイリさん、タロウさん、エカテリンさんにしろしろ質問しながら、市場を一通り回ったころ。遠くから鐘の音が聞こえる。
カーンコーン、カーンコーン、カーンコーン。
「あれは、貴族街の教会の鐘。ちょうどお昼の合図ね」
「さすがに腹減ったな。こんだけ食い物があるところ歩いているのに」
「城門前の広場に行かないか?あそこの屋台は良いのが揃っているし、景色も良いぞ」
緩い上り坂の、石畳の道が、河岸から城塞の門まで続く。ここがこの街のメインストリートだそうで。左右には大きな商会とおぼしき数階建ての建物が、壁のように並んでいる。一階部分を店舗としているところも多いらしく、豪華な衣服などが並んでいる店もある。
城門の前は、馬車のロータリーになっている。もちろん貴族は馬車で中に入れるが。ここで降りて中に入る人も多い。通いの文官のようですね。
ロータリーの横は、城壁に沿って公園のようになっている。ここは河岸より高いところにあるので、柵が手すりのように張り巡らされてます
植木やら花壇もあり、市民の憩いの場になっているようで、けっこう人も多く、屋台が結構出てますね。
「騎士宿舎は中にあるけど。昼休みなんかは、しょっちゅうここまで食べに来るんだ」
とエカテリンさん。良く見ると、騎士の格好をしている人も何人かいる。
「アイリたちは、先にちょっと場所取りしといてくれ。食い物はお任せで良いよな?」
屋台と合わせて、一区画がフードコートのようになっている。机に長椅子が並んでいるので、アイリさんと空いているところで待つとことにした。
エカテリンさんというと、お気に入りらしい屋台で買い物中。
トレイを借りて、それに買った物を乗せて持ってきてくれた。
「わりい。飲み物は別屋台なんて、もうちょっと待ってくれ」
バケットサンドというやつかな。フランスパンを開いて具を挟んで、一人分ずつに切り分けた感じのサンド。
野菜と魚を炒めたものに、ソースがかかっている。結構なボリュームだ。
ただし問題が一つ。
エカテリンさんが、今度は飲み物を持って戻ってきた。果物のジュースっぽい。
さて戴きます…の前に。
「エカテリンさん。レッドさんにこれ一つは無理かな。あと、私にもこれはちょっと多いです」
エカテリンさんお気に入りってのは、このボリュームもあるのだろう。
五人分買ってきたのは良いけど。さすがに私に一つ丸ごとは厳しいかな。レッドさんも同じく。
エカテリンさんは、買ってきた店に行って、一つのサンドを三等分に斬ってもらった。それをわたしが二つ、レッドさんが一ついただくことにします。
余ったサンド一つ丸ごとはどうなるかと言えば、エカテリンさんが責任持って召し上がるそうです。相変わらず健啖ですね。
柵の側と言うことで、高台となっている公園からは街が一望できます。南の方には港が見えていて、結構な数の帆船が停泊しています。ガレオン船みたいのやら、すらっとした長い船など、いろいろ泊まっています。
港は浅い湾のようになってるのですが。その湾に蓋をするような感じで島があるのが見えます。全景が見渡せるわけでは無いが、大阪湾に対する淡路島? そこまででかい島じゃ無いか。島の岸もはっきり見えるので、大きさは半分以下でしょうね。呉に対する江田島あたりの方がぴったりかも。
その島が天然の防波堤みたいになっている感じかな。船が停泊するにはぴったりな場所でしょう。
港から川沿いに上流方向までに建物が続いています。川の対岸にも街が拡張し続けているようです。
人と富が集まり、それがまた人と富を呼ぶ。そういうスパイラルにうまいこと乗っている街です。
ギルドの銀行機能でも思ったけど。これだけの施政が出来ているアイズン伯爵って、すでにチートなんじゃ無かろうか? 彼一人で全てを成したとまでは言わないですが、人材を集める能力にも優れているように思える。
うん。この街が気に入りました。ここに住んで、もっといろいろ見て回りたいな。
宿への帰りは、ギルトの連絡馬車に同乗させて貰うことが出来きました。私自身はいくらでも歩けるんだけど、アイリさんがちょっお疲れ。
ファルリード亭に付いたら、キャラバンでも一緒だった騎士が二人待ってました。一人は料理騎士の人です。エカテリンさんと私の護衛を交代して、隣の部屋に宿泊するそうです。しかも交代で不寝番。なんか申し訳ないですね。
まぁこんななりでもレディーですので、男性と同室は論外。部屋の前で歩哨というのも、宿なので遠慮。妥協して隣室で待機だそうです。壁を叩けば、すぐに来てくれるそうです。
そもそも私もレッドさんも護衛は必要ないけど。トラブル避けはしばらく付けておいた方が良いとはタロウさんの言。
昼間のおっさん貴族についての報告も、料理騎士さんから伺ったけど。私のことを把握してとかエイゼル領への嫌がらせではなく、ほんとうにただ一人で馬鹿をやっただけのようで、心配する対象では無いのだけど。逆に、あれに関わったことで、こちらに注意が向く可能性もあるとかで。しばらくは注意はして欲しいとのことです。
とりあえず、今日の一行プラス騎士二人で、夕食を取ることにしました。
この宿"ファルリード亭"は、美味しい食事も評判で。キャラバンで噂を聞いていた料理騎士の人は、一度ここに来てみたかったそうな。
流石に今夜は酒は飲まないけど、いろいろ料理を頼んでは、出てきた料理について運んできたモーラちゃんに聞いて
ます。モーラちゃんに聞いてもしょうがないのでは?とは思ったけど、結構詳しく説明出来ていますね、この子。
明日からの予定については、アイリさんから提案がありました。明日、六六の学校の授業の一環として、ギルドで護衛クランの人による講義があるそうで。この世界についての常識がまだまだ足りない私には丁度良いのでは?ということて、私も参加することにしました。
内容は、キャラバン護衛業の実際。ギルトの仕組みやキャラバンとの契約、野生の動植物やいざというときの対処方など、多岐にわたるそうです。魔獣とか野生動物の知識は、都市部では余り必要ないけど、農村ともなれば必須。仕事の受け方なども含めて、生活の根本に必要な知識としてまず学んでおいた方が良いというアドバイスです。
他にも、ギルド登録の護衛を対象とした法律やら、国についての基礎知識等のいろんな講義が連日あるそうで。しばらくはそれらをつまみ食いすることにしました。勉強々々です。
アイリさんは、今夜は自宅へ戻ります。名残惜しそうでしたけどね。
それをタロウさんが送っていきます。紳士ですね。
今夜は、レッドさんと寝ます。一人と一匹で休むのは、ここに来て初めてかも。
レッドさんの静かな呼吸を聞きつつ、私も眠りに落ちました。
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