第1章第040話 もっぺん服屋

第1章第040話 もっぺん服屋


・Side:ツキシマ・レイコ


 「おばちゃーん、さっきのに似た服をもう一着ちょうだいっ!」


 市場の中を逆戻りして。最初に服を買った店に戻ってきた。


 「向こうでなんか騒ぎがあったようだけど…ってあんた、それどうしたんだい?!」


 袈裟懸けで切られたので、文字通り袈裟のような状態になってぶら下がっている服を抑えながら歩いてきた。隠すべき処はところは隠しているけど、さすがにこれじゃ出歩けない。


 「バッゼンベルの貴族に切りつけられて、ブライン様に助けられてって…。それより、あんた怪我ないのかい?」


 擦過痕がちょっとあるかな?ってくらいで無傷です。


 「その服、直さないのかい? つぎはぎ当てるのはちょっとみっともないかね。飾り布を追加したほうがいいか」


 と。そこにブライン様についていた騎士が一人追っかけてきた。


 「レイコ殿。ブライン様が、先ほど斬られた服は証拠品して預かりたいとのことです。その服と代わりの服の代金は、領の方で持つそうですが。いかがされますか?」


 「…だって、おばちゃん」


 「本当に伯爵様のお知り合いとはたまげたね。承知したよ、ちょっと待ってな」


 おばちゃんは、さっきのよりちょっと良い感じの服を見繕ってくれた。

 新しい服に着替えて、切られた服は騎士の人に渡す。

 お代は騎士の人が払ってくれた。例の切られた服の値段も聞いていた。


 「うん。ありがとうございます!」




 市場巡りを再開だ。

 さっき、バッゼンベルのおっさんと揉めていた場所は、比較的高級品や輸入品の珍しい品物を扱うエリアだそうで。売り物は、香辛料、調味料、乾物、油、砂糖など。ここはなにか掘り出し物がありそうなので、後日じっくり見て回りたいな。


 そこから、生鮮食料のエリア。魚やら肉やらの場所と、野菜や果物などのエリアに二分されてます。

 昨晩食べたクローマ、解体前がいました。シャチか?ってくらいのサイズです。これならたしかに、焼き魚というよりは、ステーキ向きのサイズのお肉が沢山取れますね。

 もちろん、アジやサンマにたサイズの魚も笊に乗せられて並べられてます。お値段は一笊で数ダカム。お買い物の主婦らしき人が、三匹載っている笊を指して


 「うち、四人家族なのよね~」


 と困った顔をすると。店主が、


 「わかったよ、もう一匹オマケだ!」


 うーん。良いよね、こういう活気。


 「クローマも上手いけど。あのくらいの魚も旨いよな。塩すり込んで焼いて、焼きたてに食いつくのな。酒が飲みたくなるぜ」


 蟹やエビ、タコやイカは見当たらない。ここじゃ食べないのか、そもそも食べられないのか。今度聞いてみよう。


 肉屋。まぁ、捌かれた動物がたくさん吊されているというか。地球では、パックされた肉しか見ないから、さすがにグロイかな?

 先日のボアとか。鹿や牛かな? あと、元がどんなのか分らない鳥とか。


 あ、卵があった。

 とは言っても、鶏卵なんかよりずっとでかい!ダチョウの卵よりは小さいけど、重さで十倍くらいある。

 一つ四十ダカム、四千円ほど? 高いと言えば高いけど、買えないという程でもないですね。どんな味なんだろ?


 野菜も見て回ります。


 キャベツよりちょっとレタスっぽい葉菜。いくつか種類がある。

 知っているのより倍以上でかい玉ねぎ?匂いもそんな感じ。小さい玉ねぎもある…と思ったら、匂いはニンニクっぽいかな。

 イモはでかい里芋っ感じだけど、どんな味なんだろう?

 あ、ちょっと小さいけどトマトっぽいのがある。

 並んでいる品種は、季節ごとにかなり変わるし、秋になるともっと種類が増えるんだそうな。まぁビニールハウスとか冷蔵庫がないのなら、それが普通なのでしょう。


 果物は、柑橘系にみえるものとか、木の実のようなナッツ類がずらっと。あ、胡桃かなあれ?。

 果物もやはり、季節差が大きいらしい。エカテリンさんは、秋が楽しみだと言っている。


 そもそも地球の作物がも長年の品種改良によって生まれたような物だから、ここでの作物が全く同じになるわけもなく。似たような物があるだけで御の字でしょう。

 地球の料理がどこまで再現できるのか、そのうちじっくり試してみたいな。


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