第D話

今日は元旦の昼、遥と私は二人で近くの神社に初詣に来た。

「神奈子はいつも初詣で何をお願いするの?」

「あんまり来たことないからなぁ、面倒で」

「えー、毎年来てないの?そしたら何年か分お願いを損してるじゃん」

現金だなぁ。私は苦笑しつつも、羨ましいなぁと思う。

「私の分のお願いごとはいいよ。遥にあげる」

「本当?じゃあ二人で卒業旅行に海外に行くってのは?ヨーロッパ一周しようよ」

「いいね。でもそれはお願いしないでバイトしてお金貯めて、実際にやろうよ」

確かに。じゃあいい男に会えますかなぁ、いや今はそういうんじゃないんだよな。満漢全席?ディズニーランドを買い占める?いやヘリコプターを操縦したいとかかな。


ぶつぶつ言っている遥の隣で考える。

神様なんて何もしてくれない。

お母さんを返してくれはしないし、お金をくれるわけでも、家事をやってくれるわけでも、私を元気づけたりしてくれない。

私を支えてくれたお父さんや遥に感謝や尊敬することはあっても、神様なんて漠然としたものに祈りを捧げるなんて冗談でも嫌だ。


仮に何でもしてくれる神様がいたとして、どうしてちっぽけな人間に手助けしてくれるだろう。

どうしてそれを信じられるのだろう。

自分の力でどうにもならないことはたくさんある。

できる限り頑張って、無理なら無理と諦め受け入れる。それでいいじゃないか。

お父さんがいて、遥がいて学校もそんなに嫌いじゃない。充分幸せだ。

それ以上望むべくもない。


私達の番がきた。「ほら、一緒に持って」遥と神社の鈴を鳴らす縄を持ち、揺らす。

賽銭箱に小銭を投げ、二拍手。

そのまま手を合わせて祈る、のではなく決意表明をする。


私は、私が好きな人を大切にする。幸せにしてみせる。その為に頑張る。

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