神の話

第2話

我が覗ける人をよりしろとした仮宿は、その者の精神を元に創造される。精神が脆いもの、感情がコントロール出来ていない者の仮宿はすぐに崩壊する。

だが彼の世界はどうだ。皆彼と愉快に踊っている。これほど世界に歓迎され、愛された男はかつていただろうか。こんなにも慈愛に満ちている仮宿は初めてだ。



しかし、女も男に会うまでは質素ながらも見事に完成された仮宿であったのだ。

我にはそちらの方があっている。男の仮宿は充分楽しませてもらったが、とても大きく派手で騒がしい。宿に華々しさなどいらない。

うむ、そうだ。腹落ちした。シンプルな仮宿探しに出かけよう。



我にとってはあの女の仮宿の崩壊は好ましくないが、二人にとっては望ましいことなのだろう。

気持ちよく二人を祝福してやろう。

楽しませてもらった礼に一つだけ神の掲示を言い渡す。

人の子らよ。

本当に欲しいものは他人に、ましてや神に頼むものではないぞ。

自らの手で掴みに行くのだ。

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