第3話

「こんにちは」と声の主は言う。ひゃあと小さく声が出てしまう。どこから現れたのだ。さっきまで虫一匹いない空間だったぞ。振り返ると目に入ったのは祠の守り人でも、主でも、巨神兵でもなく、OLだった。

年は20~30台だろうか。神秘的で謎めいた空間に合わないスーツは、不自然なくらいシワ一つなくピシッと着こなしており神々しさすら感じる。

んんっと咳払いをしてから向かい合う。



「失礼しました。こんにちは。」

良かった。どうにも俺だけの力ではどうしようもなかった。ここの案内人だと助かるのだけど。

「ここはどこですかね?分かりますか?」

「宿を…家を探しているの」

「家…ですか」

ありゃ、会話が噛み合っていない。ともあれ話を区切ってしまえば新たに得られる情報はない。

「あなたの家はどこにあるんですか?」

「それ」

半壊したした石の建造物を指差した。

なるほど、ここの住人なのか。家が壊れたショックなのか、女性は抑揚なく無表情で喋る。

「壊れたから新しく探さなきゃ」

そう言うや否や、女性は俺の胸に手を軽く当てた。

そして、次の瞬間二人の間に光がはぜ、視界が完全にホワイトアウトした。

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