第3話
順路に沿って歩いていくと今度は海の中の展示のようだ。
小さな魚の群れが規則正しく列をなし、泳ぐ。かと思えばとても大きなサメが横切り、散り散りになる。
頭の上の方ではヒラメやマンボウのシルエットが遊泳している。
「今度イルカ乗りにいこうよ」
「どしたの突然」
「この前のラフティングメチャメチャ楽しかったからさ。もっと水と一体化したいんだよね。夏だし気持ちいいよ」
「確かに、あれは良かったよね。スリリング。どこにいけばイルカ乗れるんだろ」
「水族館なら出来るのだろうけど、せっかくなら本当の海がいいなぁ」「いいねぇ、海外ならありそうじゃない?」
後で調べよっかと言い合う。
舞台は次々に変化する。
オレンジ色を基調とした扇子や踊り子が舞い踊る和の世界。
植物の成長で四季折々を表現した世界。
星達がきらめく夜空の世界。
光の線が景色を彩ったり、ふと動植物に変化したり。
流動的で美しい。
多様で非連続な美しい世界を次々に見ることが出来る本当に幸せな空間だ。
これらの光景は間違いなく初めて見る。なのに何故かデジャヴを感じる。懐かしさを感じる。そして筆舌しがたく美しい景色が広がっているのにどこか他にもっと素晴らしい景色がある。そう思ってしまう。
どうしてだろう。
「どうしたのかなー眠いのかなー」
目を閉じ、感慨に浸っている私の手を、妻がおどけた声を出しながら取って引っ張る。
不確かな事は分からない。確かなことは目の前の女性がとても愛おしく、大切にしたいということだ。
引っ張られていた手を、逆に俺の方に優しくグッと引いて抱き寄せる。軽く頬に口づけし二人で見つめ会い、笑いあう。
こんな時間がいつまでも続きますように。
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