第2話
今日はお台場のteamLabの展示を見に来た。
俺も妻も自然の風景を見るのが好きだし、美術館も一緒に行くほど好きだ。つまり風景と芸術が合わさったteamLabは最高だ。
最近の科学の技術はスゴい。VR、プロジェクションマッピング、4DX。現実をよりリアルに、リアルよりも美しい景色をたくさん見せてくれる。
館内は既にほの暗くなっていて怪しげな雰囲気を醸し出す。規則正しく人が列をなし、思っていたよりも並ばずにスムーズに進んでいく。
楽しみだねと言い合い、スマホのチケットをタッチして非日常の世界へ入り込む。
真っ暗な館内は光を輝かせる一方で視界を狭める。
入場して最初の大広間に行ってから、うやうやしく妻に手をだす。「お嬢様、お手を拝借」「苦しゅうない」
慇懃なやり取りにふふっとどちらともなく笑いながら手を繋ぐ。
最初の大広間の展示は地球の誕生を表現している。
ビックバンを表現した光の躍動。
隆起する山、胎動する大陸。
激しく雨が降り続き、川が、海が作られる。各所で植物、魚、虫達が産声を上げ、時代の変遷とともに爬虫類や、鳥、哺乳類に変わっていく様子が視界いっぱいに広がる。
「すごいね」
「うん、生命の力強さには元気がもらえる」
「歴史が変わる瞬間だね」
「俺たちの歴史の始まりって…いや何でもない 」
暗くて分かりにくいが、ちょっと気まずそうにする妻を見て口ごもる。いつもそうだ。
俺は何故か馴れ初めを覚えていない。
そして妻も何故か言いたがらない。
電車で妻の方から話しかけられたような気がするが、思い出そうとしても思考が空を切る。
それとなく聞いても本当にヒドいよね、信じられないと被害者顔する時もあれば、どうだったっけとすっとぼけられるときもある。妻の友人の遥さんにこの話題を振ると爆笑するし、妻は真っ赤になってポカポカと俺を叩くし。
結局藪蛇になりかねないから黙るしかないのだけれど。
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