「仮宿探し ー神の審判ー」 

みかんサムライ

ある男の話α

第1話 

「よかったらこちらへどうぞ」

ゆりかもめに新しく入り込んだベビーカーを運んでいる女性と目を合わせ、手を上げすっと立ち上がる。隣に座る妻も私に釣られて立ち上がる。

「あ、ありがとうございます」

同年代とおぼしき女性がベビーカーと子供を引き連れ

会釈しながら空けた席へ二人が着席する。


「ほら、ケンタもお礼を言って」

ケンタ君は俺の目をまじまじと見たが、特に発声する様子はなかった。


「ごめんなさいね」

「いいんですよ。気にしないで下さい。今日はどちらに?」

「お台場で友人と会うんですよ」

「いいですね。私達もお台場なんですよ。今日はいい天気でなによりですね。」「ねー」


話が一区切りついたところで妻の方を見ると、俺の方を見て口をもにゅもにゅしている。俺の背は190cmあり、目立ってしまうからそういうのは控えてほしいとよく言われる。


でも、つい体が動いてしまう。

世の中には困っている人がたくさんいる。ちっぽけな俺に救える人はごくごく僅かだ。

目の前に困っている人がいて、少しでも俺がその人の役に立てるのなら、俺も救われる。

人を救えるチャンスは限られている。

俺は後悔したくない。

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