一言でこういうお話だとは表せない。読まないとわからない。しっとりとしたベールに一話一話が包まれ、読むたびに見えていたはずの物語の輪郭があやふやになっていく。息を詰めて読み、読み終わるたびにため息をつきながら物語の余韻に浸る。見えているこの現実が白昼夢のように歪む。次のお話を待つ間、常に心のどこかにこの物語が漂っている。すっかり心が掴まれているのだ。完結する時、物語は、主人公の雨は、そして読んできた私はどうなっているのだろう。楽しみで、少し怖い。