天使と悪魔のトレジャーハント(1)

 赤道直下。湿度と気温が年中高く、頭上五十メートルほどの高くに形成される林冠のために地上にはあまり日光が届かず、むしろ歩きやすいとも言える森林の地。私は愛する悪魔と共に、その木々の間を歩いている。

「天使サマ、足元気をつけて」

 言われて見ると、そこらに散らばっている枯葉にそっくりの色をした小さなカエルが、私が踏み下ろそうとした足の下で、こちらを見上げている。

「わあ。危ないところだった、ありがとう」

 ぷいっとどこかへ飛んでいってしまったカエルを見送りながら礼を言う。

「どういたしまして。まあ、カエルならともかく、それ以下のサイズの動物たちには注意を払うこともできないから、あまり気にしても仕方ないことではあるがな」

「そうだね、とても申し訳ない気持ちになるけれど」

 固い地面に、足を下ろす。無数の生命たちが定められた一生のサイクルをめぐる、その中に完全な余所者である私たちが踏み入っていることに引け目を感じながらも、これまで見たことも知ることもなかった彼ら数多の生き物たちをこの目にできるのだということには、胸の高鳴りを抑えられない。

「それで、ラブ。進む方向はこっちで合っているのかな」

「そうだな、地形から考えれば合っているはずだ」

 悪魔の手の中には、一枚の古びた地図がある。私たちはそこに記された一点を目指して、もう長いこと歩き続けているのだ。

「しかしダイアナのやつ。俺たちにここまで出向かせておいて、何もなかったらどうしてくれよう」

 悪魔のぼやきに、ちょっと笑ってしまう。そんなことを言いつつも、彼が自分の使い魔であるダイアナちゃんを大切に思っていることは一目瞭然だ。何せ、こんな古地図一枚を持って、こんなに遠い地に来てしまうくらいなのだから。

「何もなくても、私とお前で楽しく冒険できたら、それでいいじゃないか。私はむしろダイアナちゃんに感謝しているくらいだよ」

「感謝あ?」

 悪魔は信じられないとでも言いたげな目で、私を見る。

「まあ、天使サマと一緒にいられるのは、願ったり叶ったりだがな。……俺が心配してるのは、そういうことじゃなくて」

「わかってるよ。彼女が期待するようなお宝がなかったらどうしようって話だろう。ふふ、お前は本当に優しいな」

「優しくない」

 相変わらずそこは意固地に否定して、悪魔はまた前を向く。

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