wanna get a drink?

「天使サマ、今夜どこかバーにでも行かないか。人間について知るにはうってつけの場所だぜ」

 黒髪の男がいつもの如く誘惑に来たが、私が首を振るとあからさまに肩を落とした。

「何か用事でも? なんなら手伝うが」

「いや、そうじゃないんだ……。……その、……酒が飲めない」

「…………」

 男はたっぷり一秒、まじまじと私を見つめた。

「おいおい嘘だろ? なんでご主人サマからいただいた器が、アルコールも分解できない身体なんだ? それとも酒なんて悪徳だって判断なのか?」

「いや……これは何というか、個人差だ。天使の中には強いのもいる」

 男は信じられないといった表情でため息をついた。

「今度は酒に強い身体を貰うんだな。でないと、俺がつまらん」

 答えようがなくて困る私の肩に、男が腕を回した。

「でも、バーには行くぞ、天使サマ」

「え……」

「人間の素晴らしい発明品の中にな、ノンアルコール飲料というのがあるんだよ。甘くて、綺麗な色のが沢山」

 そう言って、男はニヤリと笑う。思わず心を動かされ、いつのまにやら頷いてしまっていた。

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