傲慢な男 〈ミステリー〉犯人答え合わせ
「星都くん、さすがだね、君の勘は冴えているからね。間違いないだろう。君の推理を話したまえ」
星都は得意げになって話始めた。
「社員に事情聴取をしたのですが、ある有力な情報を手に入れました。蘇我は業績が悪い部署のトップをイジメ倒していたそうです。中野常務と中臣専務はそれを見兼ねて、次期社長の山代氏に蘇我を辞めさせるようお願いに行ったそうです」
「星都くん、そういえば山代社長が部屋で遺体で見つかったそうだ」
「知っていますとも。残念です。ある人物が自殺に見せかけて殺せと蘇我に命令されたそうです。しかし、山代社長は蘇我に疎まれていた事がわかっていたようです。実際は蘇我の方が権力があったらしく……」
星都は山代社長を殺せと命じられた人物を警部に伝えた。ただ命じられただけで、実行はしていない。彼は罪に問われないはずだ。山代社長が遺書を残している。
蘇我と戦う事で多くの人が犠牲になるのなら……と自害した。
「フルヒトは悪くない! 全ては蘇我だ! 蘇我さえいなくなれば、この飛鳥商事は平和なんだ。───もういいよ、刑事さん、俺がやりました。自首します」
どこで話を聞いていたのか、秋田部長が現れた。そして話始める。
「フルヒトは蘇我が次期社長にと擁立した会長の息子だ。フルヒトは蘇我の言いなりだった。大人しいフルヒトをあいつは、あいつは! 許せなかった」
秋田部長は涙目になりながら、二十才も年の離れたフルヒトと恋人関係にある事を告白し、蘇我を殺した動機を話し出す。
「会社には派閥がある、当然だと思う。斎藤や伊藤、工藤たちは常務や専務に気にいられている。孤立した俺に優しかったのが、山代社長とフルヒトだった。蘇我はフルヒトを自分のいいようにし、山代社長を自殺に追い込んだ。俺は許せなくて……殺した」
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はい。犯人は秋田部長です。蘇我にいつも暴言を吐かれていました。しかも大事な恋人のフルヒトを手込めにされ、いいように扱われ、恨んでいました。
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お気づきですね。645年は大化の改新です。聖徳太子の息子である
そこに気づいたのが、中臣鎌足。天皇継承権のある中大兄皇子とクーデターを企てます。蘇我入鹿を暗殺する計画です。蘇我家であるにもかかわらず、仲間になった石川麻呂が刺客に選ばれました。石川が朝鮮からの貢物を献上するタイミングで、暗殺予定。
しかし、石川が震え、蘇我に計画がばれそうになりました。すかさず中大兄皇子と中臣鎌足が斬りつけ首チョンパ。首は庭へ吹っ飛んだそうです。
乙巳の変。史実に基づけば犯人は中臣か中野です。ヒント③をご覧ください。
西暦720年に日本書紀が編纂されました。中臣鎌足の子孫、藤原不比等が携わっています。中臣は「藤原」という苗字をもらいましたね。「藤」がつく苗字は藤原家を支えています。はい、伊藤部長、工藤部長、近藤部長、斎藤部長です。
中大兄皇子はどうなったでしょうか? 天智天皇になりました。天智天皇は百人一首に歌がありますね。
「秋の田の かりほの庵の苫をあらみ わが衣手は 露に濡れつつ」
犯人は秋の田、秋田部長です。無理矢理ミステリー。独りよがりのミステリー。
コメントくださった方、お付き合い頂きありがとうございます。感謝を込めて。
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