傲慢な男〈ミステリー〉

「警部、パーティーに出席していた社員の事情聴取が終わりました。一人だけ犯人らしい人物がいます。本人に分からないように今すぐ連れてきます」


「星都くん、さすがだね。君の勘は冴えてるからね、間違いないだろう。君の推理を話したまえ」

 

 星都は得意げになって話始めた。


 ホテルで起きたある殺人事件。ヒントも書きます。犯人を当ててくださいませ。


□ ▪️ □ ▪️


 六月十二日、谷宮ホテルでは飛鳥商事のパーティーが行われていた。会長の息子である山代やましろ氏の社長就任お披露目パーティーである。


「おい、社長の就任パーティーだというのに、肝心の山代くんがいないじゃないか! 早く探してこい」


 取締役の蘇我が、秘書の石川に声高に言う。高齢の会長を待たせるわけにはいかない。石川は慌てて、山代新社長の部屋に走る。


 取締役はじめ、常務の中野、専務の中臣、各部署の部長クラスが前日から宿泊していた。


「やっ、山代社長が、自、自室でお亡くなりになっています」石川は震える声で蘇我に伝えた。蘇我はパーティーが終わるまでこの事は内密にとだけ言い、壇上に上がり、スタンドマイクの前に立つ。


「皆さま、ご報告したい事があります。新社長の山代くん、いえ、山代社長ですが、体調不良という事で今日は挨拶ができません。しかし政界からも多くの先生方が出席しておられます。この場は、私が社長代理としてご挨拶を……」


 百人以上の拍手が起きる。蘇我はフンと鼻を鳴らした。

(あんな青臭小僧にこの飛鳥商事を任せておけるか! 次の社長は私だ。私は会長並みに、いや会長以上に力がある。私の力を持ってすれば日本だけでなく、韓国や中国もこの手に入れる事が出来るだろう)


 蘇我は尊大な態度で当たりを見回す。天下を獲ったような気になる。今までの苦労が報われるのだ。祖父の代からずっと飛鳥商事の繁栄に力を貸し、身内同然で辛苦も味わった。その事も挨拶に含めた。


「続きまして、韓国支部よりお祝いの品と祝電が届いております。僭越ながら私が読ませていただきます。い、祝いの品、ひ、一つ、一つ目、一つ目は……」


 秘書の石川の様子がおかしい。ずっと震えている。蘇我はその理由を尋ねた。


「会長の前ですので、つい震えが……」


 石川が答え終わらないうちに、複数の男の叫び声がし、同時に会場の電気が一斉に消えた。


「誰かー、明かりをつけろ!」

「斎藤、工藤、近藤、伊藤はどこにいるー、会長の身の安全を確保しろー」

「秋田、出席者の先生方を我々の部屋へ誘導しろー! 部屋は645号室だ」


「蘇我、覚悟ー!」「おりゃー!」


「会長、わっ、私は何か悪い事でもしたのでしょうか?」


 怒号と叫び声が会場に響き渡る。


 ───明かりがついた。壇上には蘇我の首無し死体が一つ転がっていた。恐ろしい事に首が見当たらない。風に揺れるカーテン。窓から外に投げ捨てられたようだ。


□ ▪️ □▪️


 通報を受け、星都は警部の運転する車で現場に行く。ホテル西側には人だかりがあった。人間の生首が降って来た事を興奮して話す通行人がすでにスマホを向けられている。


 事件のあった会場には、飛鳥商事の社員がごった返し、女子社員は泣いている。星都は落ち着いていた男性社員から事情聴取を始めた。


 事情聴取の内容は字数制限の為、全部ふっとばします。もはやミステリーではないのかしら。笑


 中野常務、中臣専務、秘書石川、斎藤部長、工藤部長、近藤部長、伊藤部長、秋田部長の中にきっと犯人がいる。星都は確信した。


 会長は高齢だ。しかも女性である。男の首を短時間で切る事は難しいと思われた。


 犯人はヒントを見れば一目瞭然です。お暇な方はヒントだけで答えられるので、ぜひ。ミステリー、もっと真面目に取り組まなきゃ。反省する星都。


ヒント①……飛鳥 自殺した山代 秘書石川 645号室 中野 中臣 蘇我

ヒント②……飛鳥時代 大化の改新 中大兄皇子 中臣鎌足 

ヒント③……日本書紀 天智天皇 百人一首

 

 

 犯人は史実通りではありません。現代の創作です。あしからず。m(__)m


 蘇我の傲慢さに耐えきれなかった犯人。飛鳥商事のクーデターです。


『誇りは崩壊に先立ち、傲慢な霊はつまずきに先立つ』十六章十八節




 


 


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