第2話 足利幕府は要らないんじゃね
後柏原天皇 京 御所 1521年 師走
ん~、本当に1歳の赤子か?
智仁から報告は受けてたけれども、ん~。
慧仁がの~
とりあえず、明日にでも会ってみようかの。
返事をしたため雅綱へと託す。
「雅綱から見て慧仁はどうじゃ?」
「昏睡する前と後では全くの別人に思われますが、天照大御神様によりオモイカネ様が覚醒したとあれば納得はできます。」
「この度は陛下におかれましては拝謁いただき、誠にありがとうございます。」
なんだ、姿と言葉遣いが違いすぎて、何言ってるか頭に入って来ないぞ。頭が拒絶している様だ。
智仁と目が合うと苦笑いされてしまった。
方仁に至っては驚きで放心してるではないか。
「うぬ、そう硬くなるな。ここには家族しかおらん。爺でいいぞ、爺で」
そう言葉をかけると、1歳児の笑顔になった。
「この度は方仁も慧仁も母御が薨去して辛かっただろう」
そう声をかけると慧仁の笑顔は崩れ去り、泣きそうになりながら方仁に向かい
「お兄様、おたあさまは私を産んだせいで薨去なさいました。誠に申し訳ありませんでした。」
と、深々と頭を下げた。
しまった~!!!
そんなつもりじゃ無かったのに。
「それは違うぞ、慧仁。おたあさまはそう言う運命だったのだ。ましてや慧仁、自分のせいなどと自惚れるんじゃない。」
さすが神童方仁、良い補助じゃ。
「お兄様、ありがとうございます。」
「ところでじゃ、慧仁、何か話が有ったんじゃないのか?」
慧仁 京 御所 1521年 師走
ちょうど良かった。
母親がらみでお願いが有ったんだった。
「ちょっと本題とは違いますが、おたあさま絡みで一つ。一昨日の晩、また天照大御神様が夢に出て来まして、」
「「「何と!」」」
「天照大御神様が仰るには、出産が死と隣り合わせなのは、妊婦に体力が無いのが理由の一つだそうで、その原因を除くには鳥獣の肉を食す事が必要であるとの事でした。」
「仏の道に反する事ではないのか?」
「私もそう思い尋ねてみたのですが、逆に積極的に食べるのを勧められました。いきなりお触れを出すと市井でも混乱すると思われますので、まずは私たち皇室から始めるのが良いかと思われます。」
「うむ、ではその様に手配しよう」
「特に鳥肉を食べる様にとの事です。よろしくお願いします。」
「それでは本題に入ります。今年の弥生に足利が京から姿を消しました。その事に関して如何するつもりか?と天照大御神様がお尋ねになりました。それにつきましてはお爺様やおもうさまの意見を聞かなければ何とも答えられないとお答えしましたが、さて、爺様、おもう様、それにお兄様、いかがお思いになりますか?
まずは、足利が必要か否かです。
お爺様は20年かかってやっと即位の礼をあげられた。また、伊勢神宮式年遷宮はもう何十年も行われていない。
如何でしょう?それでも足利は必要でしょうか?」
「朕は必要無いと思うぞ。武力も無く、銭も無い。領地さえごく僅かじゃ。乞食じゃな、乞食。」
おもう様もお兄様も同意する様に大きく頷く。
「ではお爺様、朝廷としては今後、どの様に動くおつもりかお聞かせ願う事は出来ますか?」
「どう動くも何も、どうにもならんのじゃないか?」
おもう様もお兄様も同意する様に大きく頷く。
「それでは私からの提案を聞いて頂けますか?」
「良かろう、話してみよ。」
「ありがとうございます。まずはお兄様、我らの弱点は何ですか?」
「ん~、先ほど慧仁が上げた幕府の弱点が、そのまま我らの弱点だな。銭と武力を持って無い点だ」
「その通りです。浅知恵ではございますが、仮初めの力と銭を得る方法は細川と組む事です。
年が明けますと、高国も拝謁に参ります。その時に足利の征夷大将軍の解任と、高国の太政大臣就任と、それに伴い征夷大将軍に代わっての日の本の治世を打診するのです。
勿論、無料ではありません。交換条件としてお爺様からおもう様へ皇位の生前譲位の費用、お兄様と私の親王宣下の費用、伊勢神宮の式年遷宮の費用を出させるのです。式年遷宮の費用は取引材料として、途中で取り下げて貰って構いません。とにかく細川の経済力を出来るだけ多く削って弱体化させるのです。」
「なるほど。」
「補足させて頂くと、太政大臣就任が重要な点です。征夷大将軍に任じて朝廷外で権力を握らせるのでは無く、朝廷内、陛下の下で権力を握らせる事によって上下関係をしっかりと植え付けるのです。そして太政大臣は世襲では無い為、高国が亡くなればそれで終わり。如何でしょう?」
「そう上手く行くもんかの。まあ、やるだけやって見ようではないか。駄目なら駄目でまた考えてみよう」
「しかし、譲位のう」
「恐れながらおもう様。私は我ら天皇家の盾にも鉾にもなろうと決意いたしました。
私には天照大御神様から頂いた知識が有ります。それを活用する為の智慧もオモイカネ様に頂いています。
それらを実現させる為には、私の立場が親王である事が、これから重要となってきます。
天皇家を思っての事で他意はございません。」
と、三頭身なので重く感じる頭を下げる。
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