第13話 不死の能力
「危ない!!」
咄嗟の判断で月城さんを横に突き飛ばす。月城さんは突き飛ばされたせいで尻餅をついてしまうが、飛び掛かってきた魔獣を避けることが出来た。
「アァァァァ!!」
「うわっ!?」
「如月君!!」
だが魔獣の攻撃は終わらない。月城さんへの攻撃が失敗した事を悟り、ターゲットを切り替え僕に襲い掛かってきた。
「まだ生きていたのか!!」
「アァァァァァ!!」
飛び掛かった魔獣に対して、僕は体に拳を入れる。顔を何発か殴った後、お腹に蹴りを入れて魔獣と距離を取った。
「如月君、昔格闘技でも習ってた?」
「習ってないよ。全部我流で練習してた」
全ては朝や放課後1人でしている鍛錬の賜物である。
毎日繰り返し練習しているおかげで、体がスムーズに動いた。
「いい攻撃よ、如月君!!」
「ありがとう」
「後は私に任せて」
月城さんがここ声で何かを呟くと炎の壁が魔獣を包み燃え上がった。
紫の体が赤い炎に包まれ、姿を見ることが出来ない。
「すごい」
「まだまだ!! こんなものじゃないわよ!!」
「アァァァァァァァァ!!」
魔獣の断末魔が辺りにこだまする。焦げ臭いにおいが辺一面に充満する中、炎が消滅するとそこには黒く炭化した魔獣が姿を現した。
「これで大丈夫ね。後は状態を確認して‥‥‥」
「いや、まだだ!! まだ終わっていない!!」
月城さんの炎の攻撃をされても、魔獣はその場に立ち続ける。
あれだけ燃やされて、体も黒く炭化しているのにピンピンとしている。
「信じられない耐久力!! あいつは不死身なの!?」
「もしかしたら魔法の攻撃が効かないんじゃないかな?」
「それはないわ!! 魔獣は人間や他の動物と同じだから、魔法の攻撃も効くはずよ!!」
「確かにあれが普通の魔獣ならそうだと思う」
「どういう事?」
「もしあれが普通の魔獣じゃなくて、魔法に耐性を持ってるとしたらどうだろう」
僕は魔獣と初対面だけど、あの魔獣に魔法は効いていない。
現に月城さんがあれだけ攻撃しても立ち続けているのがその証拠である。
「魔法が効かないっていう貴方の考えが的中しているとして、何か方法はあるの?」
「直接物理攻撃をするしかない」
「接近戦をするという事ね‥‥‥わかったわ」
「月城さん、何か武器は持ってる?」
「護衛用の短剣と果物ナイフしかないわ」
「そしたら果物ナイフを貸してくれない?」
「正気!? 貴方は果物ナイフで戦う気なの!?」
「僕なら大丈夫だから!! 早く!!」
出し渋る月城さんから果物ナイフを受け取り、魔獣に対峙する。
学校で使っている剣や家で使う包丁を抜かせば、
「如月君、貴方は後ろから援護をお願い」
「いや、僕が前に出るよ」
「危険よ!! 怪我だけじゃすまないわ!!」
「それは月城さんだって同じなはずだよ」
「私は訓練を受けてるもの」
「僕だってこういう敵を想定して今まで鍛錬をしていたんだ。月城さんの足手まといにはならないはずだよ」
魔法は月城さんには劣るけど、剣の腕になら自信がある。
ここ10年魔法が使えない分、剣を使ったトレーニングをしてきた賜物でもあった。
「わかったわ。覚悟してね、如月君」
「もちろんだよ」
僕がナイフを持って、魔獣に襲い掛かる。
だが魔獣はナイフを見ても怯む様子はない。むしろ嬉々として僕に向かってきた。
「危ない!!」
「大丈夫だよ」
人間相手なら流石に気が引けるが相手は魔獣。手加減をする必要がない。
僕を掴もうとした魔獣の手を避け、体に向けて果物ナイフを刺す。
「凄いわ‥‥‥魔獣が如月君に触る事すら出来ないでいる‥‥‥」
「これぐらいの攻撃、僕の想定内だ」
突撃してくる相手をいなし、足をかけ相手をよろけさせる。
その隙をついて、魔獣の首元に刃を差し込んだ。
「やった!!」
「まだよ!!」
ナイフを引き抜いた瞬間、魔獣が僕の方を向く。
そして僕の手を掴もうと手を伸ばす。
「如月君から離れなさい!!」
「ぐっ!!」
魔獣に向かって剣を向ける月城さん。
上段下段と剣を振り、ついに魔獣の腕を捕えた。
「今度こそ!!」
「いや、まだだ!! 離れて!!」
切り落とした右腕から新しい手が生え、その手が月城さんの方へと向く。
僕は再度右腕にナイフを刺し、切断をした。
「助かったわ、ありがとう、如月君」
「こっちこそ」
魔獣から距離を取り、一旦体制を整えた。
僕も月城さんも息が上がっている。それだけこの魔獣がタフなのを意味する。
「物理攻撃も効いてないなんて」
「危ないから如月君は離れてて。あいつは普通じゃないわ」
「普通じゃないってどういう事?」
「魔獣は普通の生き物と同じで、炎で焼かれたり刃物で貫かれたりすれば絶命するの」
「でも、あいつは平気そうだよ」
「だから異常なの。あいつは何をされても死なないから普通じゃないわ」
「いうならば、不死身の魔獣ってことだね」
「そうよ」
どうやら僕達は厄介な相手に出会ってしまったみたいだ。
「月城さんはこのタイプの魔獣に出会ったことはある?」
「ないわね。初めてよ」
「そうなんだ」
「なんだか貴方はあのタイプの魔獣と戦ったような言いぐさね」
「まさか。僕は魔獣と戦うのてって初めてだよ」
今まで魔獣の姿は見たことがあっても、戦ったことはない。
魔獣との戦歴でいえば、月城さんの方が上だと思う。
「もういいわ。ここは危険だから貴方は下がってて」
「月城さんはどうするの?」
「本部の人達が来るまで、あいつは私が引き付ける」
「無茶だ!! 勝算がないのに、不死の魔獣を相手にするなんて」
「無茶でもなんでも、やらないといけないのよ!! この街を守る為に!!」
「月城さん」
「大丈夫よ。既に本部には連絡を送ったから、もうすぐ応援が来るはずだから」
「応援が来たとしても、不死身の敵を相手に何とかなるの?」
「わからないわ。でも、今よりは状況は好転しているはずよ」
月城さんは楽観的に話すけど、僕は状況が好転するようには思えない
「月城さん」
「どうしたの? 如月君」
「僕達であいつを何とかしよう」
「出来るの?」
「うん。僕に秘策があるんだ」
魔法も使えない僕だけど、あいつを止める秘策が一つだけある。
「如月君、貴方大丈夫なの?」
「大丈夫。魔法が使えなくて頼りない僕だけど、信じてほしい」
「如月君‥‥‥貴方!?」
「月城さんが僕が魔法を使えないから、必死に守ろうとしてくれてるのはわかる。だけどここは僕の事を信じてほしい」
やけに月城さんの動きが悪いと思っていたけど、それは僕をかばうように戦っていたという事を加味すれば説明がつく。
戦ってる時、僕の事を必死に守ろうとしてくれたのがその証拠だ。
「わかったわ。貴方の事を信じる」
「ありがとう、月城さん」
月城さんの言質が取れたのが大きい。
あとはあの敵を倒すだけだ。
「そしたら私はどうしたらいいの?」
「月城さんはあいつに魔法を使って、魔獣の気を引いてほしいんだ」
「わかったわ。でもその間、貴方はどうするの?」
「敵が気を引いている隙に、僕があいつに止めを刺す」
「そんなこと、本当に出来るの?」
「出来る。僕ならあいつを一撃で倒す」
「不死身の敵相手に自信満々ね」
「うん。不死身の存在なんて、この世に存在しないから」
その事は僕がよく知っている。だからあいつも簡単に殺すことが出来る。
「そしたらお手並み拝見させてもらうわね」
「うん、僕に任せて」
「それじゃあ行くわよ。如月君!!」
魔法を唱え炎の弾を飛ばし、魔獣の足止めをする月城さん。
その場で足を止め、炎の弾を避ける魔獣の隙を僕はうかがうのだった。
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