第11話 不穏な叫び声

 食事の時間が終わり、後片づけを終えた僕は望を送る為玄関にいた。

 望は靴紐を結び終えると、鞄を持ち立ち上がった。



「じゃあな、海。また明日学校で」


「うん。望こそ気をつけてね」


「あぁ、またな」



 家のドアが閉まり、望が帰ったのを見届けた後リビングへと戻る。

 リビングに戻ると莉音と薫子さんがお茶の準備をしている所だった。



「望様は帰られましたか?」


「はい。今ちょうど帰りました」



 テーブルの中央にはティーカップとティーポットが置かれている。

 丁度今薫子さんがティーカップにお茶を入れている所だった。



「海さんの分も用意しますね」


「ありがとうございます。でも、夕食の支度や後片付けもしてくれたんですから、これぐらい僕にやらせてください」


「気を遣わなくてかまいませんよ。これぐらい大した手間ではありませんから」


「でも‥‥‥」


「海さんは高校生になったからといっても、まだ子供なんですから。こういう時は大人に甘えてください」


「薫子さんまで僕の事を子供扱いして」


「甘えられる時は甘えましょう。もう少し私を頼ってください」



 自分が非力な子供だってことは、僕が1番よくわかっている。

 大人にならなきゃと思っても自分では思っていてもこの10年間薫子さん達と過ごす中で、その事は痛い程思い知らされてきた。



「海さんはまだ高校生なんです。高校生なら高校生らしく運動や勉強、それに恋愛と青春を謳歌していて下さい」


「それを薫子さんが言うの?」


「そうですよ!! 勉強や運動はまだしも、恋愛はお兄様にはまだ早すぎます!!」


「莉音はどこか論点がずれてない?」



 その言い分だと、僕はしばらく恋愛が出来ないってことになる。

 莉音は鼻息を鳴らし、やけに興奮しているように見えた。



「続きはお茶でも飲みながらゆっくり話しましょう」


「そうですね」


「せっかくですから、何かデザートでも用意しましょうか」


「やったぁ~~! 薫子さん、大好き!」


「褒めても何も出ませんよ」


「薫子さん、この家にデザートなんてありましたっけ?」


「ないですよ。なのでこれからコンビニに買い出しに行ってきます」


「それなら僕が行きますよ」


「私はこの家のお手伝いなのですから、私が行きます」


「薫子さんは家の事を全てやってくれているんですから、こういう時ぐらい休んでいて下さい」


「でも‥‥‥」


「薫子さん、こういう時のお兄様は絶対に自分の考えを曲げないので任せた方がいいと思います」


「‥‥‥非情に不本意ですけど、わかりました」


「どうやら話が着いたようですね」



 僕にとって不本意な言われ方だけど、少しでも薫子さんの役に立てるならそれでいい。

 財布を持った僕はそのままリビングに出て行こうとする。



「何が欲しいですか?」


「私はイチゴのアイスが食べたいです、お兄様」


「私はチーズケーキでお願いします」


「わかりました。少し待っていて下さい」



 僕はそう言って、家を出てコンビニに向かう。

 近くのコンビニまでは大体歩いて10分ぐらいかかる。



「よし、着いたぞ。目的の物は売ってるかな」



 コンビニの棚を物色すると、2人に頼まれていた商品が見つかった。

 幸いにも目的のものは売っており、それらを買ってお店を出た。



「ふぅ~~、よかった。全部売ってて」



 薫子さんのチーズケーキはすぐ買えたけど、莉音が頼んだアイスが売っているか不安だった。

 莉音はアイスには人一倍のこだわりがあり、コンビニの物だと特定のものしか口にしない。


 幸いにもいつも莉音が食べているイチゴのアイスが売っていて本当によかった。

 もし売っていなかったら、コンビニをはしごするという面倒なことになっていたから助かった。



「後は家に帰るだけだな」



 そう思い家路へと向かって歩き始めると、どこからともなく音が聞こえた。

 それは通常の日常ではでない音。何かを打ち付ける音である。



「何の音だろう」



 壁に何かを打ち付けるような打撃音、そして人と人が口論するような声が聞こえてきた。



「あっちの曲がり角から聞こえてくる」



 音が鳴る方へと歩いて行くと、その音が鮮明に聞こえてくる。

 何かをぶつける音だけでなく人の声もはっきりとわかった。



「‥‥‥‥なさ‥‥‥‥‥て‥‥‥‥」


「女性の声だ」



 どうやら女性が路地裏で誰かと揉めているらしい。

 こんなに時間に物騒だなと思いつつ、路地裏へと向かう。



「いい加減‥‥‥離しなさい!!」



 女性の叫び声と共に、路地裏から赤い炎が空を舞った。

 これがただ事じゃないという事にすぐに気づき、急いで路地裏へと向かう。



「一体何が起こってるんだ!?」



 あの炎は確実に魔法だ。そうでなければ人気のない所で、あんな炎が空に舞い上がるわけがない。



「今助けに行くよ!!」



 僕は路地裏へと急ぐ。そこでは女性が何者かに襲われていた。



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