第13話 真っ白なクリスマスの夢

ちょうど今、アドベントカレンダー企画で12/25が当日本番のミッションをこなす話を書き終えたので、それにつながる話を。




初めてロンドンに行ったのはクリスマも間近の12月だった。街はどれほど派手だろうと思ったら、信じられなくらいシックだった。いや、もちろん派手なところもあっただろう。けれど私には滞在先のすぐ近くにある「それ」があまりにも印象的だったのだ。


「シックすぎる……」


今にも雪が降り出しそうな灰色の雲は低く垂れ込め、黒ずむ石造りの建物は影の中で沈黙していた。そんな中、光に満ちたショーウィンドウは異空間のように浮かび上がる。そしてそこにあったのは……真っ白なクリスマスツリーだ。


白いリボン、白いオーナメント、白いモール。全ての装飾が白だった。木自体が緑だったか白だったか思い出せないけれど、とにかく白だったのだ。


最初はつまらないと思った。せっかく来たのにこれか、と落胆した。けれど毎晩のようにその脇を通り、その木を見つめているうちに……白は私の中に溶けて染み込んで、いつしかなくてはならないものになっていった。


薄ら寒い夕方も、息が凍るような夜も、白は輝いていた。ついに雪が降り出して辺りを覆えば、それはまさに白の王国のシンボルとなったのだ。信じられないほどに美しかった。息をのむほどの迫力だった。それは抗えない魅力で、私の奥に深く深く刻みこまれた。


あれから長い時間が過ぎたけれど、今でも一番白い飾りが好きだ。モミの木に真っ白なリボンを結ぶ時、ロンドンの冷えた夕暮れを感じる。温かいミルクティーを淹れて、ショートブレッドを齧ろう。そう思えば、知らず微笑みが広がる。遠い日の白いクリスマスは、今も燦然と胸の中で輝いている。


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