第11話 魔女狩りの広場に優しき力満ちる時

妹からの荷物の中に旅番組を録画したものが入っていた。「冬のドイツ」 睡眠不足で、でも起きていなければいけない時間にはもってこいかも。再生ボタンを押せば「メルヘン街道とロマンチック街道」の文字。グリム大好きで、ババリアンチャイナコレクターの私にはぴったり。


CMがスキップされていなかったので、その時間には刺繍しながらまったりとドイツの旅を堪能。


グリム「語り部」の逸話やブロッケン山に登る蒸気機関車。まあるい城壁に囲まれたネルトリンゲンにルートヴィッヒの白鳥の騎士。でも、一番心に残ったのはヴェルニゲローデの町と魔女たちのこと。


賢く心優しき女性たちが魔女という烙印を押されて処刑された魔女狩り。それはおそろしく理不尽な歴史だ。けれど魔女専門店のオーナーの一言に心救われる。


そんな彼女たちを尊敬しているし誇りに思う。だから、その歴史を超えた先でこの町を楽しんでほしい。


明るい冬の日差しのもと、処刑が行われた広場が映し出される。この手の映像には色々と思うところがあるが、今日は静かなままだった。心にさざ波は立たず、冷気は押し寄せず……そこには光だけが存在していた。


ふと、石畳の上に伸び上がる多くの白い腕を見たような気がした。おどろおどろしいものではない。それは結びつき組み合い細やかなグリッドを作り上げて、この先何人もがこの地に伏すことがないよう、守っているかのようだった。


そうか、賢くて優しく強い女性たちは、きっとそんな人たちなんだ。彼女たちが望むものはただ、誰もの幸せ、穏やかな暮らし。たとえ何があっても、憎しみや怒り、報復などではない。だからこそ、こうして美しき未来へとその手を伸ばし続けている。


感想がイメージとなり、目の前で立ち上がることはよくあるけれど、久々に綺麗なものを見たと思った。光から作られた無数の腕が手が、優しき力で人々を包み込む。そこにあるのは消えることのない愛だ。


冬のドイツに行こう、心の奥底からそう思った。

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