第7話 零下のロンドンでさらなる冷気に襲われる

霊感はある方ですか? と聞かれたら、とりあえずハイと言っておく。でももう一つ突っ込んで言えば、それは能動態ではなく受動態だ。どういうことか、小さい頃から強烈霊感少女だった親友の言葉がまさにそれ。


好かれるんだよねえ。なんでだろうねえ。本当好かれるよねえ。寄ってくるよね。見られてるよね。アピールされまくり?


誰にかって……人ならざるもの? それでも当の本人である私は自覚なし、ほぼほぼ影響なし。そう、世界は謎に満ちている、不思議なことだらけだということで。そんな親友との大学時代の寒〜いあれこれはいつかまた書くとして、今日の話は真冬のロンドン。


小さなホテルのロビー脇、手書きのそれは壁に貼ってあった。「ゴーストツアーのご案内」


待ち合わせ先に現れたのは黒い唇のゴシックなお姉さん。このビルは〜、この教会は〜、このホテルは〜。白い息を吐きながら、なんだか死神の友人のような案内人と真冬の街を彷徨うというのもなかなか味わい深い。


「以上です。一杯飲んでいく?」そう誘われて近くのパブへ。ジントニックを手渡してきながらオーナーが言った。


「俺んちにすごいのあるんだけど、見てく?」

「……?」

「地下だから好きな時に行ってみろよ」と促されて降りれば……。


アルコール用の貯蔵庫というか倉庫代わりというか、うん、これはあれだ、かつての牢屋だ。小綺麗にしてあるけれど……いやあ、ここはダメでしょう。思わず一歩後ずさった。


寒い、寒い。外より寒いのは気のせいだろうか? そこの黒いものとか、あそこの黒いものとか、影だよね? 薄ら笑いで自問自答し、速攻駆け上がって二杯目を頼んだのはいうまでもない。


「ツアーに加えたほうがいいですよ」

「?」


一気にあおれば、ジュニパーベリーの香りにようやく人心地つく。これはひょっとして隠れ名所では。すごいおまけがついてきたものだ。カラカラと氷を鳴らせば、なんだか楽しくなってきた。ほどよく酔いが回ってきたか。にこやかにグラスを拭くオーナーを横目に、さあて、三杯目を飲むかどうかと迷う夜だった。

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