第4話 闇の迷宮もまた、白い柔肌でできている
友人に誘われてとんでもなく気ままな旅をした。アーモンドの白い花咲くトルコ、春の頃。
祭り会場のように騒々しいチケット売り場をさまよい、どうにか乗り込んだ長距離バスが到着したのはイスタンブールから遠く離れたアナトリア、小さな村の広場。
カッパドキア。ギョレメ。
この先へは行けないよ。本当は、まだまだ深く続いているんだけどね。
運転手さんが陰になった通路の向こうを指差して言った。見えない手が、聞こえない声が残された世界。深い闇に閉ざされた長い時間を想って思わずブルリと震えた。
こっち、こっち。
次に入ったのは台所。似たような部屋ばかりの中、そこだけは違っていた。煮炊きで
これはね、おまじないだ。この地下都市の台所の
そんな話は聞いたことがなかったけれど、彼の真剣な瞳に免じて笑ってあげた。
多くを切り捨て、それでも求める何か。弱者とは誰を指して言うのか。無音の世界の中に遠く賛美歌が漂ってくるような気がした。光の中の
あれから春は何度も巡って。あの日のおまじないは効いたのだろうか。それともこれから効くのだろうか。
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