エンドロールで泣かないで

白雨

第1話

 「エンドロールで泣かないで」


綾香は僕にその先に何か期待できるような笑みで笑う。

 エンドロールの先に期待なんて物は無く。綾香はこのエンドロールが終われば君の世界へ還ってしまう。

 僕はこれが綾香との最後の時間だと実感すると涙が止まらず嗚咽を漏らしながら子供のように泣いた。

 綾香は僕の頬に軽くキスをして席を立ちエンドロールが終わった真っ暗な暗幕に消えていった。



綾香と初めて会ったのは東京にある大学に入ってすぐに僕は映画監督になる夢があるから自作映画を撮ったり鑑賞をしたりしているサークルに入った。

 入って一週間ほどしたら歓迎会という事で居酒屋で飲み会があり僕の斜め向かいに座っていたのが綾香だった。

 正直いうと綾香には一目惚れをしてしまった。

 綺麗にまっすぐ伸びた黒髪に少し気が強そうな目。身長は160センチほどでスタイルは抜群!

 僕はこんな子とこれからのキャンパスライフを過ごせると思うとテンションが上がり、未成年ながらお酒の力を借りて綾香に話かけてみた。


「こんにちは」


 「ふふっ。もう暗くなってるからこんばんは、じゃないかな」


 「そうですね」


 話し掛けたのはいいが緊張してしまった僕は上手く口が回らずに「はははっ」などと適当に相槌を打ち話を止めてしまった。


 やってしまった。


 初めての印象がこんなのだと終わった。そう思っていたのだが意外と綾香の方から話を振ってくれて僕は緊張も解れた。

 綾香とは同い年だと知って話も弾み、歓迎会が終わるまで話が途切れる事もなかった。


 歓迎会が終わり解散となり僕は駅の方に歩いていた。すると後ろから綾香から声をかけられた。


 「帰りそこの駅?」


 「そうだよ!綾香ちゃんは?」


 「私もこっちだよ!よかったら一緒に帰ろっか?」


「うん!今日はずっと話してくれてありがとう。楽しかったよ」

 

 他愛も無い会話をしながら歩いていた。本当はもう一軒行こうかなんて言ってみたいがそんな勇気は無くて駅にはあっという間についてしまい、そのまま綾香とは別れて僕は家に帰ってすぐに寝てしまった。


 次の日、僕は昨日の初めて飲んだお酒のせいで二日酔いで頭が痛くてフラフラしていた。洗面所で顔を洗い身支度をしていると携帯が鳴った。画面をみると知らないアドレスからだった。メールを開いてみるとそれは綾香からのメールで、昨日知らない間にアドレスを交換していたらしい。記憶には無く、お酒の怖さを知った。

 メールにはただ一言の「おはよう」と可愛らしい猫の絵文字だけだったが、なぜか僕はそれが嬉しくてて浮かれ、綾香とはいい未来があるかもとガッツポーズをしたり少し古いラブソングを口ずさんだりして二日酔いもどこかへ行ってしまいご機嫌で家を出て大学に向かう。


 午後の授業も終えて僕はサークルに顔を出す。そこで綾香を見つけて話掛けて大学の事や今年からお互い一人暮らしを始めたというのであるある話をして楽しい時間を過ごしていると部長がみんなを呼ぶ。

 恋愛物の短編自主映画を撮ると言う事で主人公とヒロインなど役を決めると言うのだ。

 僕は綾香と主役をできる妄想など考えていたのだが夢である映画監督の為に監督の助手を申し出て僕の役目は決まってしまった。

 しかも綾香はヒロインが決まり、その相手が見た目は少しチャラい一つ上の先輩のアキラさんだった。この先輩はあまりいい噂がない人だったので心配してしまった。

 今日のサークルは役を決めて終わりで監督

である部長の脚本ができ次第撮影するとなった。


 サークルを終えて綾香と一緒に駅まで歩いて帰る。


「ヒロインおめでとう!綾香ちゃんならいい画が撮れそうだよね」


「でも私は役者になりたい訳じゃないし、演技は不安だよ」


 「じゃぁ、映画が好きでサークル入ったの?」


 「うーん、夢見る少女じゃないけど王子様を探してるのかも」


 「なにそれ笑」


なんて笑っていると駅に着いてしまった。

 駅で綾香とは別れ別々の帰路に着く。

 電車に揺られていると綾香からメールが届く。「私が言った王子様を探してるってイタいと思った?」

「そんな事ないよ!女性はいつまでもプリンセスだから」

「翔太君それイタいよ笑」

 こんな下らない事をやりとりして最後に綾香が今夜電話したいと来たので僕は喜んでOKした。


 

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エンドロールで泣かないで 白雨 @gazila

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