第13話 今日から「ユウ」「レイ」

「玲奈ちゃん! 玲奈っ!!!」


 自分を呼ぶ声に、悠木玲奈はカッと目を見開く。


「ゆ、!!」


 それから加納勇助に向けて、自分の右手を必死に伸ばした。


「気を付けろ、バカヤロー!」


 交差点の真ん中あたりでやっと停止したトラックの運転手が、罵声を残して去っていく。


 加納勇助と悠木玲奈は、ふたり抱き合ったまま歩道に座り込んでいた。


 ザワザワと、周りに人集りが出来る。


 しかし暫くすると興味が失せたように、人々は思い思いに去っていった。


「玲奈ちゃん…か?」


 やがて加納勇助が、悠木玲奈の耳元で、恐る恐ると囁きかける。


「その通りですが…考えてみると、おかしな質問ですね、勇くん」


 同じように加納勇助の耳元で、悠木玲奈が笑顔で答えた。


「ハハ、アハハハ」


 段々と落ち着きを取り戻した加納勇助は、悠木玲奈を抱く手に力を込めて大笑いする。


 悠木玲奈も同じように、加納勇助を力一杯に抱きしめた。


「もしかしたら玲奈ちゃんは、俺のこの手を掴むために、刻を超えたのかもしれないな」


 ゆっくりと悠木玲奈から身体を離した加納勇助が、胸の前で右拳を握って真っ直ぐに見つめる。


「そうですね。きっと、そうなんでしょうね」


 悠木玲奈も頷くと、そっと両手で加納勇助の右拳を包み込んだ。


 それから、どちらからともなく、お互いに真っ直ぐ見つめ合う。


「好きだ、玲奈ちゃん。俺と付き合って欲しい」


「…もう呼び捨てで、呼んでくれないんですか?」


「え⁉︎」


 悠木玲奈はつまらなそうに、少し唇を尖らせた。


「あー…コホン」


 加納勇助は頬を真っ赤に染め上げて、照れたように咳払いをうつ。


「玲奈、俺と付き合ってくれ」


「はい、喜んで!」


 悠木玲奈は最高の笑顔で応えると、再び加納勇助の胸の中へと飛び込んだ。





 ~おしまい~

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今日からユウレイ〜死んだと思ったら取り憑いてた⁉︎〜 さこゼロ @sakozero

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