第9話 玲奈の真実
加納勇助は、何本目かの細い路地で、地面にうずくまるひとりの中年男の姿を見つけた。
その男の周辺には、散乱する納豆と紺色の学生鞄が落ちている。
カッと頭に血が昇った加納勇助は、男の胸ぐらを掴み強引に起き上がらせた。
「ぐう、く…苦しい」
「お前の顔は覚えたからな、次に玲奈ちゃんの近くで見かけたら、警察に突き出してやる」
再び男を地面に投げ捨てると、念のため男の顔をスマホで写す。
それから納豆を拾い集め、学生鞄を担いで近くのカーブミラーに駆け寄った。
「これは一体、どう言う事なんですか⁉︎」
信じられない物を見たように、悠木玲奈が加納勇助を問い詰める。
「どうって言われてもな。俺もカッとなって、身体が勝手に動いただけだから…」
言いながら加納勇助が、何かに気付いたように両目を見開いた。
「今思ったんだけど、玲奈ちゃんは時間を逆行…したのかもしれない」
「逆行…⁉︎」
「あくまで、もしかしたら…だけど」
「まさかそんな事って…あ、ああああああ!!」
そのとき悠木玲奈が、大きな声を張り上げる。
「な、何⁉︎ どうかした?」
「思い…出した」
それから蒼い顔で、ガタガタと震える自分の身体をギュッと抱き締めた。
「思い出した? 何を?」
「私が死んだの…たぶん、この後です」
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