第7話 待ち人来る

 悠木玲奈の自宅は、加納勇助の家から十五分くらいの距離であった。


 少し離れた十字路から、二階建ての普通の戸建ての様子を伺う。


「外からザッと見た感じでは、おかしな所はないようです」


「そのようだね」


 カーブミラー越しに、視線を交わして頷き合う。


 一度、家の前を通ってみたが、特に変わった様子も見当たらなかった。


「次は学校…と言いたいところですが、たまたまテスト期間中で、今から行っても間に合いません」


「…そうなんだ?」


「はい。ですから勇くんのコンビニのイートスペースで、偽者が通るのを待ちましょう。偽者が私の行動を真似してるなら、十三時ごろには帰ってくる筈です」


「それは助かる。正直、お腹が減ってたからね」


 自分のお腹を撫でながら、加納勇助はホッとしたように微笑んだ。


 ~~~


 結局、悠木玲奈(仮)がコンビニ前の道に姿を現したのは、十三時半を過ぎた頃であった。


 加納勇助は直ぐさま、鏡のある、店の奥の洗面所へと移動する。


「これは遅過ぎますね。私はかなり余裕をみて、十三時と予想しました。時間が早まる事があったとしても、遅くなるなんて…」


「怪しいって事?」


 加納勇助の問い掛けに、鏡の中の少女がゆっくりと頷いた。


「出来れば追い掛けて欲しいのですが…」


「言っとくけど俺は、格闘とか護身術とかはからっきしだからな?」


「……そう、ですよね」


 相手は得体の知れない何者かだ。無理強い出来ない事は、悠木玲奈にも充分に分かっている。


「でもま、何とかなるか」


「…え⁉︎」


 悠木玲奈が驚いて顔を上げると、加納勇助がとても優しく微笑んでいた。


「こんな平日の真っ昼間だ。何かあったとしても大声出せば、誰かが駆けつけてくれるだろ?」

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