第6話 偽者⁉︎

「昨日の夕方…昨日の夕方だって⁉︎」


 加納勇助が、跳び上がるように席を立つ。


「は、はい!」


「それは絶対おかしい! だって君は、今朝もちゃんとコンビニに来たじゃないか!」


「……え、ええええ⁉︎」


 今度は悠木玲奈が跳び上がった。


「いつものように表の柵に仔犬を繋いで、いつも通りに六時半頃に…」


「そんな事まで、知ってるんですか⁉︎」


「あ⁉︎ あーいやまあ、たまたまと言うか…」


 そのために可能な限り、早朝のシフトに入っていたとは言い出し辛い。


「そうなんですね。ですがこれはもしかして…」


 そこは聞き流してくれた悠木玲奈が、考え込むように口元に右手を添えた。


「宇宙人とか妖怪の仕業かもしれません」


「…………は?」


 彼女の突拍子もない推測に、加納勇助は大口を開けて目を丸くする。


「最近ずっと、誰かに見られてる様な気がしてたんです。きっと狙われていたに違いありません」


「……じゃあ君は、その宇宙人だか妖怪が、君の姿に成りすましていると…?」


「だって現実に、私がここに居るじゃないですか」


「……なるほど」


 その強い圧力に、加納勇助は頷くしかなかった。


「こうしては居られません。その偽者を探しに行きましょう!」


「え⁉︎」


「だって家族や友達に、何かあってからでは遅いんです」


「た、確かに」


「だからさあ早く、直ぐに支度をしてください!」

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