EP4 鳥族の戦士 ビアティ・オーゼル
鳥族の戦士、Bランク冒険者 通り
ビアティ・オーゼル、Lv171
158cm、32kg
得意技「メテオダイブ」
得意魔法:風魔法、重力魔法、無属性魔法など
【ブレイズ】胸部位「白鷲のマーク」
内臓・脳などの保護、身体強化、気圧・衝撃耐性付与
【装備】ミスリル鉤爪、ミスリルくちばし、風纏いの羽衣、
【加護・契約】大空神の祝福
ビアティ・オーゼル。
彼のこの名は本名ではない。
ホーラントでは、ギルドでも剣を加えた白鷲のマークを紋章とし、
ワルシャワの王宮でも、各貴族領でも、大抵白鷲のマークを、家紋と共に併用している。
侵略、統合、淘汰、分裂、自治、復権。
複雑な歴史を持つホーラントでは、領土についても曖昧で、王族もホーランド全域を領地にしているわけではなく、【大貴族の中から選出された王】の家門が120年ほど続いているだけだ。もともとホーラントを建国した時の王族はもう存在しない。
しかし、ホーラントの最初の王、ホーラントの解放の王は今でも領民の民間伝承で語られ、初代建国旗である《白鷲》は今でも領民に愛される紋章なのだ。
そして、最初の王オーゼルは、偉大なる鳥族の戦士だった。
ヒト族より寿命の短い獣人族。それよりもさらに寿命の短い鳥族は、その短い一生を苛烈に生きる。
だが、恵まれた体格とは言い難く、鳥族全体でも、長らくSランクの冒険者は出現していなかった。
最初の王オーゼルは冒険者では無かったものの、伝説となるほどの強さで領民を纏め、侵略者を追い出し、魔族を討伐し、その地を平定した。
戴冠し、王となった後も善政を敷き、民に愛されたオーゼル王が無くなったのは40歳の時だった。
以後、何度も国土の分断、復権を繰り返しながらもホーラントは一応国としてまとまってはいるが、かつての王のようなカリスマはもう生まれないと、領民の誰もが思っていた。
誇り高き鳥族の戦士は、多くが峠や山間部に住む。
若き日の鳥族の少年が、白鷲のブレイズを胸に刻み、峠を出て街へ降り、冒険者となった時、彼はまだ12歳だった。
少年はビアティ・オーゼルを名乗り、かつての鳥族の王を目指した。
そして、鳥族の戦士によるSランク冒険者となる事を目指して、冒険を繰り返した。
15年後、27歳になったオーゼルは、Bランク冒険者として活躍し、その名をホーラント全土に知られるほど有名になっていた。
「オーゼル、今日はどうする?」
よくパーティを組んで動くオーゼルの相棒カダン。かれはドワーフ族だ。
「カダン、ボクはもう一度Aランクへの昇格試験に挑もうと思ってるよ」
「またか。そうだな、何度でも挑戦すればいい。オレもいずれまた挑戦するさ」
オーゼルとカダンは、既に3回、Aランク昇格試験に挑戦し、試験に落ちていた。
40~50年が寿命の鳥族と違い、ドワーフ族の寿命は300年以上ある。
長命のドワーフやエルフは、Lvアップの速度も成長スピードも速くはない。
半年や1年程度で急速に成長などしない。だからカダンは、オーゼルに付き合って3回試験を受けたが、もう一度受けようという気になるには、10年は必要だと思っていた。
短い期間で急激に成長するのは、ヒト族や鳥族、獣人族くらいだ。
そして、Lvアップ時にSPの割り振りなんて自由が利くのも彼らの特権だった。
ドワーフやエルフ族は、成人する前に大方の成長が止まり、LvアップしてもSPを自由に自分で振り分けるなんて成長の仕方が出来ない場合がほとんどだ。
そういう意味で、ドワーフのカダンは、短い人生を燃えるように生きるオーゼルをうらやましいと感じ、尊敬もしていた。
しかし、「うらやましい」と言葉にしてしまう訳にはいかない。彼らはドワーフよりもはるかに寿命が短い。彼らからすれば長命のエルフやドワーフがうらやましいのだ。
「じゃあ、明日の朝出発するから、早ければ一週間くらいで戻る」
そう言ってオーゼルは出て行った。
彼の受けているAランク試験は、オーゼルには不利な内容だった。
自然結界の中にある神域と呼ばれる森で、必要な鉱石を集めて来るという試験内容なのだが、この結界は天井が50mほどの高さになっていた。
オーゼルの一番の特技である1000m上空からの急降下「メテオダイブ」は当然使えないし、その速度を活かした空中戦も活用しづらい。
戦闘がメインでなく、鉱石を集めるという試験オーダーも、単独で受けなければならない試験形式も、体格で不利なオーゼルにとって鬼門だった。
大都市にあるギルドであれば、試験はどこでも受けられる。場所によってはオーゼルに向いた試験内容のギルドもあるだろう。しかし、オーゼルのプライドがそれを許さなかった。
それ故、オーゼルは不利だと知りながら、なんどもジュゼルの森の試験を受け、そして失敗をしていた。
27歳になり、成長期を過ぎてしまったオーゼルにとって、もはやSランクどころか、Aランク昇格でさえも、寿命を考えれば後が無い。
それでも彼は諦めては居なかった。
「今回こそは、、、」
ミスリルの鉤爪による急降下攻撃が使えないこの結界内で、彼が取った新しい戦闘法は、「ミスリルくちばし」による突撃技だ。
上空からのダイブの場合、体重32kgの彼は《重力魔法による加重と風魔法による加速》で威力を最大限まで高めて一撃必殺の技に昇華した。
しかし、加速のための距離も、重さも加えきれない結界の中で、硬いモンスターを倒しきるには、工夫が必要だ。
鉱石を守るゴーレムたちは、鈍重だが装甲が厚い。
だが、あと一つ。あと一つ鉱石を集めれば、ついに合格に手が届く。
「風魔法、トルナド!」
円形に巻き起こした風を結界内に封じ込め、強烈な竜巻を創る。
その竜巻の中に自身が入り込み、加速を加え、音速を超える弾丸となりそのミスリルくちばしで敵に突進する
「ウィスィプカ・ジャククラー!」
巨大で分厚いゴーレムの装甲を撃ち抜く弾丸の如く、オーゼルは白い閃光となって貫いた。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンンンン、、、、、、
ゴーレムたちは途端に動かなくなり、ガラクタの如く崩れ落ちた。
「やった、、、ついに、、、ついに、、、、、、」
オーゼルはついにAランク昇格試験をクリアした。
突進攻撃の衝撃で、自身もふらふらになり、ゴーレムたちのように倒れそうだった。
「まだまだ、、、。まだボクは強くなる。もっと、、、」
残された寿命はもう長くはないだろう。子供も居ないオーゼルにとって、
鳥族の象徴である冒険者となる夢だけが、掛けがえの無い目標なのだ。
相棒のカダンに報告しよう。
クランの皆も喜ぶだろう。故郷へも久しぶりに顔を出そう。
この日、十数年ぶりに、鳥族の戦士からAランク冒険者が誕生した。
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