女神の力で死体さえあれば何でも再現できる最強チートスキル『レディメイド』を手に入れた猫耳の俺より、俺の美人メイドが無双する件
第33話 ドワーフの秘宝ゲットだぜ! おや、エレンたちが仲間になりたそうにこちらを見ているぞ
第33話 ドワーフの秘宝ゲットだぜ! おや、エレンたちが仲間になりたそうにこちらを見ているぞ
ダグラスは「これが宝物庫の鍵だ」と懐から金で出来た鍵を見せてくれた。錆一つない輝くカギを俺に手渡し、「こっちだ」と王の間を出た。なんだ、ここに用意したわけじゃないのか。がっかりだ。思わずため息をついてしまった俺を見た彼は、「好きな宝を持って行ってほしくてな」と詫びる様に言い、王の間を出た。それに俺やメイド、エレンたちも後をついてくる。ただ一人ダグダ王だけはまだ体が全快ではないのか、厳かな木の杖をつきながら、最後尾を歩いている。
「ここだ」
王の間を出て少し歩いた先の部屋に、厳重な錠前や鎖で縛られた扉があった。ダグラスは先ほど見せた鍵とは別の鍵を使い、それらを開錠して中へ入っていく。すると天窓から注がれた光が、室内を明るく光らせた。そう、見渡すばかりの黄金や金属製の武器や宝石が山の様に積まれていた。
「おお、すげえ」
俺とメイドは中に入り、金色に輝く刀剣を手に取った。それを爪でひっかいてみると、傷一つつかない。それにこの重み、純金だ。武器棚に飾られている金の十字槍を手に取ってみた。長い分刀剣より重い。だがこの重み、悪くない。変な笑い声が出る俺に対し、メイドが肘で俺を小突いてきた。
「本命をもらいましょう」
メイドの声に俺はダグラスの方に振り返り、伝説の斧が無いことに問いかけた。そう、この部屋には純金や様々な宝石をあしらった英雄のような筋骨隆々な男や、恰幅の良い女神の彫像はある。だが、斧は一切見当たらなかった。
「焦るなって」
ダグラスは笑いながら、先ほど王の間で見せた金の鍵を俺たちに見せている。そして俺たちの方を歩み寄り、ちょっとどいてくれと俺たちをエレンたちの方へ行くよう指示を出した。
「確か、ここに。あった」
彼は少し誇りの積もった床を手で払い、一見変哲の無いただの石畳に金の鍵を突き刺して開錠するようにひねった。ガチャリとどこからか音が聞こえ、ごごごと石畳の床がスライドし、隠し階段が現れた。
「少し待っててくれ」
ダグラスはその中に下りていき、しばらくしてから金の両刃の斧を持ってきた。それを俺たちに渡し、重々しい口調で「大切にしてほしい」とその斧について説明してくれた。
「それを光にかざしてくれ」
ん? 俺は重い斧を天窓めがけて掲げると、斧の色が七色に変化していく。おお! 隣に立つメイドも「見事なスキルですね」とダグラスに感想を漏らしている。
「ダグラスのスキルなのか?」
「いや、先祖の力だ」
彼はそういって俺の手から斧をとると、「我が血に宿るマイスターたちよ、今こそその力を解き放ちたまえ」と呟いた。すると彼はその斧で、先ほど俺が手に取り眺めていた十字槍を切り付けた。一切抵抗を見せることなく金で出来た槍は二つに折れ、さらには十字槍をかけていた棚まで綺麗な切れ後を残して真っ二つになった。
「我が家に伝わる最高品質の貴金属をその身に宿した、けっして刃こぼれしない武器だ。取扱いには注意してほしい」
そう言って俺にその斧を渡してきたので、俺はおもわず隣に立つメイドに渡した。するとメイドはそれを天に掲げて目を細め、刃や装飾をチェックしている。彼は「よく盗まれませんでしたね」とダグラスに問いかけると、彼は「一応この本当の宝物庫は王族以外行けないんでな。人間たちはここまでしか来れないってわけ」と刀剣など目立つ宝の山の部屋を彼は指さした。なるほど、エレンと同じく亜人とやらは宝を隠す術に長けているようだ。俺はメイドからドワーフ族の秘宝、バルクカザートをアイテム欄に収納する。その光景に、フィンやダグダ王、グロリア達が「消えてしまった」と驚いている。
「なあ、宝を渡すのは構わない。だが、一つだけ願いを聞いてくれないか?」
申し訳なさそうなダグラスの問いかけに、俺は「何だ?」と問いかけた。するとメイドは背後から俺のネコミミを頭皮にくっつけるように手でぺたんと押し倒し、「聞けません」と拒絶した。だがダグラスはお構いなしに、言葉を続けてしまう。
「俺を、お前らの仲間にしてくれないか?」
彼の問いかけに、俺とメイドは顔を見合わせて「無理だ」と即答した。彼のスキルは便利だが、もう生成した彼を一体持っている。俺はアイテム欄から彼を取り出し、彼らに「こいつがいるし、間に合っている」と返答した。すると彼は諦めたように肩を落とし、「だよな」とうなだれてしまう。対してダグダ王は何もない空間から現れた息子を前に、「ど、どういうことじゃ」と震えた声で困惑を見せている。
「我らと同じ、彼のスキルで作り出された存在です」とフィンは妻と偽のエレンを抱き寄せ、ダグダ王に説明している。その光景に、「人の領分を軽々と超える力……神か悪魔か……いや、神なのであろう」と恭しく杖をつき、何か祈りをささげている。
「では、私をおつれください」
ダグラスがだめならばと、本物のエレンが俺たちに立候補してきた。だが俺たちは彼同様にエレンの申し出を断ろうと思った。だが、エレンには秘策があったようだ。「私は世界を見たいです。この世界を救った、レディ様たちと、この命尽きるまでご一緒したいのです」
嬉しい申し出だが、あいにくもうエレンは間に合っている。そう思いながら偽のエレンを見ると、彼女は困惑したようにフィンやグロリアの傍に立っている。するとグロリアが頭を下げて「私からもお願いします」と懇願してきた。
「どういうつもりだ?」
「足手まといはごめんです」
俺とメイドの言葉にエレンは「足手まといにはなりません!」と答え、それに続く様に母のグロリアが「昨晩から考えていたのです」と俺たちに事の流れを教えてくれた。聞けば、この世界の情勢は不安定だから、王族の所在は出来る限り分散したいらしい。だがこの街に残る獣人やエルフ、ドワーフといった亜人たちを守るためには王が必要。そこで、ダグラスかエレンのどちらかを俺たちに差し出したいらしい。
「どうか」
「お選びください」
ダグラスとエレンが信徒のように膝をつき、俺たちに懇願してくる。まいったな、正直どちらも偽物で良いんだが。困りはててメイドを見ると、まるで捨て犬を拾う子供を見る母親のような視線を俺に送り、首を横に振った。だよなあ。断るか。
彼らには悪いと思ったが、生身の仲間の価値が見いだせない。
「すまない」
「嫌です!」
俺の言葉を聞き取りたくないと意思表示をするように、エレンが叫んだ。その声を聴いたメイドが、「うるさいですね」と金の剣を握り、脅すようにその切っ先
をエレンの首筋に押し付けた。喉からつうっと血を流すエレンは少しもひるむ様子無く、メイドの方を見ている。俺は思わず「メイド‼」と声を荒げてしまう。だが彼は、「黙りなさい」と冷淡な声で吐き捨て、聞き入れない。
「奴隷に身を落とさなかっただけ、幸せだと思いなさい」
エレンに対し、メイドが剣よりもきつい言葉を投げかけてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます