女神の力で死体さえあれば何でも再現できる最強チートスキル『レディメイド』を手に入れた猫耳の俺より、俺の美人メイドが無双する件
第3話 異世界生活スタート!チート能力「レディメイド」で奴隷商人をぶったおせ!?
第1章 亜人たちの住む世界
第3話 異世界生活スタート!チート能力「レディメイド」で奴隷商人をぶったおせ!?
―異世界、どこかの森?―
「あ、あの……」
横に長く伸びた耳を持つもさもさの髪の毛の少年が、心配そうな表情で寝ていた俺の顔を覗き込んでいるようだ。まるで羊のような毛並みの髪を持つ彼に、俺はここはどこだ?と問いかけた。すると、彼は何かに気が付いたように俺の手を取り、走り出した。
「どこへ行くんだ?」
「僕らの村! ここら辺をうろついている奴隷商人は、君みたいな珍しい亜人を探しているんだ」
亜人? 俺は、れっきとした人間だが。そう思っていると、「君の獣の耳は、僕らみたいに亜人の証だろ?」と長い耳を前後に動かして見せた。おお、すごい。
「ちょ、耳触らないで!」
す、すまない。だが、俺が亜人ってどういうことだ? こいつから見たら、普通の人間が亜人なのか?そう思っていると、彼は「君のそのネコミミ、違うのかい?」と問いかけてきた。ネコミミ?俺は彼が言っていることがいまいちよく分かっておらず、俺の耳はここにあると、野暮ったくのびた髪の毛の中に隠れた、耳を見せようとした。それを見せると、なぜか目の前の彼が驚き転倒してしまった。おいおい、大丈夫か?
俺は彼に手を伸ばすと、彼は後ずさりを見せて森を揺らすような叫び声をあげていた。
「み、耳が4つ、ば、ばけもの!」
何言ってるんだ?俺の耳はこれだけだ。そう思っていたが、彼は俺の頭部をずっと指さしている。頭部になにがあるというのだ。
フニュン
フニュン? 俺は頭部に二つほど感じる、柔らかくも不思議な感触のそれを手でいじった。髪の毛のさらりとした感触の奥にある、ゴムのような柔らかさ。あれ、一度意識すると、なぜかそれを俺は前後にぴくぴく動かせる気がした。
「こ、これ」
腰を抜かした彼は、どこから取り出したのか手のひらサイズの鏡の破片を俺に手渡した。俺はそれを受け取り、手で角度を変えてこの感触の正体を調べた。
俺の頭頂部を中心に左右に三角にツンと尖った、耳だ。は、耳? 外側は俺の髪と同じで、黒髪に覆われた耳だ。まるで、あいつのような。いや、ネズミとも違う。これは、ネコ?なんで俺の耳にそんなものが。もしかして、これがあいつの言っていた加護とかいうやつか?
悩もうとした矢先、森をかき分けるように、俺の前のいた世界でも見たようなフォーマルな格好をした、成金のように派手な宝石などを指にはめた小柄な男が現れた。その背後からは、二足歩行だがもはや獣の方の遺伝子が強いのではないかと思われる、狼のような人間が槍を持って立っていた。
「ひひひ、これは珍しい。若い亜人を二人も見つけられるなんて」
「ぼ、僕がさっき叫んじゃったから」
震える彼は、成金たちを見て体を竦ませていた。何とかしようかと思ったが、俺も今は武器が無い。一人なら逃げられるかもしれないが、地の理が分からない以上逃げるのも得策じゃない。俺は成金に、「街へ行けるのか」と問いかけた。すると下品な顔で「素直な子は好きだよ。行くとも。君らが抵抗しなければね」と笑っていた。そんな成金の姿に、過去俺から精巧な女性のマネキンを作らせていた男を思い出していた。懐かしい。金払いは良いが、気持ち悪くて二度目に来た時殺したんだよな。
「わかった。ついていこう。ただし、こいつは見逃せ」
俺は両手を上げ、敵意が無いふりをしながら、交渉した。
「ふうん、まあ、いいでしょう」
成金は品定めをするように、俺と彼を交互に見て、交渉成立だと俺に伝えた。背後に立つ狼たちに何かを耳打ちしていたが、俺の頭部にある耳が彼らの会話をほぼほぼ筒抜けの状態で教えてくれた。なるほど。俺は戸惑うメリーの腕を手に取り、抱き寄せた。
「やはり止めだ。寂しいからな。お前らが本当に約束を守るかも怪しくなった」
「おやおや即交渉を破るとは、商人として見過ごせませんねえ。ウルフマン!」
承認は指をぱちんと鳴らすと、左右に立っているウルフマンたちに俺たちの捕縛を命じていた。名前の通り、狼らしい姿かたちの獣人を前に、逃げ切れるかが微妙だなと頬を汗が伝っていた。
「だ、だめだよ。僕らの村の仲間も、最近あのウルフマンの仲間に襲われて殺されたんだ。君も殺されちゃうよ」
殺されないし、死なない。それより、今の情報は本当か?
「う、うん。最近骨だけだけど、埋めてあげてお墓を作ったから。今日はそのお墓参りをしたくて」
上出来だ、坊主。俺は彼のふさふさな頭を力いっぱい撫でてやり、彼に名前を問いかけた。メリーとなのる彼に対し、そこに連れていけ!と指示を飛ばす。訳の分からない様子の彼に対し、俺は殺されたいのか! と脅しをかけて、彼を背中に乗せて案内させた。
かくして俺たちVSウルフマンの鬼ごっこが始まったのだが、幸いにも俺の体も多少は獣じみていたらしい。背中に小柄とはいえ彼を担ぎながら、木々を縦横無尽にかけていけるのは爽快だ。木々から地面に着地する際も、軽やかに着地してすぐにダッシュが可能な体に感謝してしまう。
「そこ右! そしたら湖があるからそこだよ!」
「オッケー。飛ばすぜ!」
そう言って俺は木々を伝うようにジャンプし、開けた場所についた。澄んだ湖がそこにはあり、その近くに少し大きめの石が並んで5つ置いてあった。
「これか」
うつむく彼は、寂しそうに頷いている。悪いな、正直助かった。俺は彼を背から降ろし、素材探知を始めた。ひーふーみー、あの石の下に、確かに死体が眠っていた。
「確かにあるな。一つはダメか、計4つ。十分だ」
「地震!?」
おどいている彼とともに、「とうとう追い詰めたぜ!」とウルフマンが3匹現れた。一匹増えているが、この際誤差だ。彼らは俺たちを包囲するように、森に至る湖を背にした俺たちを囲むように、左右と前に散会した。だが、いいのか?
「おとなしく俺たちに売られな!」
「まあその前に十分楽しませてもらうがな!」
「ま、マスターも待ってる」
時間切れだ。
「レディメイド」
地震が止んだと同時に、俺は小さくつぶやいた。その声に呼応するように、呻くように土の中からゾンビのように現れる、4人の戦士。
2メートルほどの背丈でカニのようにずんぐりとした体格で金属製の鎧をまとったようなロボットだ。それに彼らの手に握られた巨大なハンマーは、ウルフマンが握る槍を貧相な武器だとあざ笑うかのように、木漏れ日を受けてきらりと光った。J1だ。メリーには悪いが、彼の仲間を素材にさせてもらった。
「亡者たちのお怒りだ」
俺とメリーを守るように前後左右に立つロボットたちを前に、見たことが無いのだろうか。彼はもちろんウルフマンたちも驚いた様子で二の足を踏むことができずにいた。どうした来ないのか?
挑発するようなポーズをとる俺に対し、一人のウルフマンが激怒し力強く槍を握り、突撃してきた。おそらくその武器に自負もあったのだろう。俺ではなく、J1を突き刺したと思いたかったウルフマンの一頭が、情けない声を上げた。
特殊な合金で出来たJ1オリジナルは、早々傷つくことは無い。そのため素材収集や、組み立てに時間がかかると以前コンドルが言っていたような気がする。本当ならメイドを作った方がよい気がしたが、威圧的にJ1にしてよかった気がする。事実、突撃してきたウルフマンの一体が文字通り鉄槌を頭からくらい、地面に押しつぶされていた。
「ステータスオープン」
表示された画面のアイテム欄に素材1と記載されているのを見て、画面を消した俺は残るウルフマンたちを指で数え、なんだか楽しくなってきた。
「後悔するなよ。だが安心しろ、お前たちは、もう俺の仲間だ」
おびえた様子で突撃してきたウルフマンたちは悲鳴を上げる暇なく、J1に素材にされてしまった。その姿に腰を抜かして言葉も出ないメリーに、俺は大丈夫か? と手を伸ばした。すると彼は泣きそうな表情で、J1を見ていた。まあ、そうだよな。
「これは君の友達だ。悪いが、利用させてもらった」
「ど、どういうこと?」
それは、俺も聞きたいんだがな。なあ、奴隷商人さん。
森の茂みを揺らす男の姿を視認しつつも、俺はとりあえずメリーを村に運ぼうと思った。おびえて腰の抜けているメリーは、俺が彼の腕を握るとびくりと背を震わせた。やはり、トラウマか。しかたあるまい。だが、これは無駄じゃない。
「君の友達のおかげで助かった」
俺はそういって彼を立ち上がらせ、腰が抜けている彼をおんぶした。背に乗る彼を支える腕が少し湿っているような気がするが、俺は彼に村はどこだ。と問いかけた。少し怯えた様子だが、彼はあっちと、奴隷商人が逃げた逆の方を指さしていた。
俺の背後を縦列で歩く4機のロボット。不思議な光景の中、俺はしばらく歩き始めて小さな集落があるのを発見した。
ウルフマンのような180センチほどの身長で、浅黒い肌をした羊のような角を生やした男が立哨をしている村にたどり着いた。その男は俺たちの姿を視認した瞬間、腰を抜かして「敵襲」と叫んでいたが、俺の背に乗るメリーを見て慌てて敵襲を訂正するように、メリーの名を叫んでこちらにかけよってきた。
メリーも俺の背から降りて、一瞬体のバランスを崩しながらも嬉しそうに「父さん!」とその男の方へ走り出した。
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