手紙 解決編
教室に帰って来ると
「ここみちゃん、どうだった?」
と桜ちゃんが心配そうに聞いてきた。
ここみは内心ショックでたまらないのだ。
昼休みの途中から、自分の見落としに気付き推理を組み立てた。結果がわかり、なんで、こんな簡単なことに気付かなかったのだろうと残りの時間で自分を攻めた。
だが、それももう終わった。
「桜ちゃん、放課後時間ある?解決編よ!」
なんせ、ここからは解決編なのだから。
「解決編?」
「ええ。この手紙の送り主はセコイ告白野郎じゃない可能性があるのよ」
「?」
桜ちゃんはピンと来てないようだが、放課後にわかってくれればそれで良い。
それから、2つの授業と掃除をこなし、とうとう放課後になった。
教室では、誰かが聞いてしまう可能性があるので空き教室で解決編のお披露目だ。
「じゃあ、今回の手紙のことについて説明するね。今回の件は細かいけど気になるところがいくつもあるの」
「気になるところ?」
「たとえば、手紙の内容とかね」
「昼休みと放課後以外、違いはなかったと思うよ?」
「うんうん、違うの。覚えてない人は戻って確かめてほしいんだけど、私の手紙の方は、体育館うら。桜ちゃんの手紙の方は、体育館裏と書かれていたの」
「ただの間違いじゃない?」
「そう考えるのが普通だよね。でも、こんな考え方も出来ない?
私達の手紙、送り主が別だって
」
「それは…、少し無理があるような」
「そうかなー。だってこの<裏>って漢字、5年生では習わないよ?6年生で習うんだよ?私もひらがなで書くし」
「そっか。じゃあ私が6年生の人で、ここみちゃんが6年生ではない人に、手紙をもらったってこと?」
「そのとおり!あと、私に手紙を送った人は昼休みに来なかったんだよね」
「用事があったんじゃない?」
「そうも考えられるけど、今日の昼休みはそんな用事なかったらしいんだよね」
「さっき、先生に聞いてたことってそれのこと?」
そう。空き教室に行く前に先生にさらっと聞いたのだが。さすが、桜ちゃん。よく見てる。
「じゃあ、つまりどうゆうことなの?」
「つまりねー、私の手紙の送り主は私達が手紙について話していたのを聞いていた、同じクラスの人なんだよ。それで、自分ともう1人の送り主がセコイ告白野郎だって思われてるって知って昼休み来なかったんだよ。まぁ、来てたら私、ボコボコにしてたから良い判断だと思うけど」
「イタズラじゃなかったんだ…」
「うん。だったら、2人の送り主についてだんだんわかってきたでしょ?」
「うん。ここみちゃんの方が同じクラスの人で、私の方が6年生の人ってことだよね」
「そう。でね、今更なんだけどこんなにかぶるなんておかしいじゃない」
「確かに。1人だったらわかるけど、送り主が違うとなったらおかしいね」
「だから、一緒に書いたと考えたらしっくりくると思わない?」
「一緒に書いた?」
「そう」
「でも、恥ずかしくないですか?告白の手紙を一緒に書くって」
「そうだよねー。だったら、兄弟だったらどう?」
「兄弟?」
「そう。私みたいに性別が違って、歳も離れてたら別だけど、5年生と6年生、1歳差だよ?ありえると思わない?」
「確かに…。私も歳が近いお姉ちゃんか妹がいたら相談したいなと思います」
「じゃあ、もうわかったでしょ?うちのクラスに5年生と6年生の兄弟なんてあいつしかいないじゃない」
「雄大くんだ。だけど筆跡はどうするんですか?」
「友達に聞いたんだけど、雄大くんは兄弟で習字の習い事にいってるらしいの」
「つまりお兄ちゃんの方も字がとても上手なんですか」
「そう。だから、送り主は雄大くんと雄大くんのお兄ちゃんってことになるんだけど、証拠がないのよー。私達がしたのは、状況推理ってやつだから。当たっているとかどうか、私が直接雄大くんに聞こうと思うんだけどどう思う?」
「私が雄大くんに直接聞いてもいいですか?その推理だと雄大くん、ここみちゃんが好きだから」
「ありがとー。桜ちゃん!」
さすが、桜ちゃん。言いたいことが分かってる!
翌日
桜ちゃんが雄大くんに聞いたところによると、私の推理は当たっていたとのことであった。さらにもう1つ報告があったのだが、桜ちゃんは雄大くんのお兄ちゃんと付き合うことになったらしい。おめでたいことである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます