手紙 前編

ここみが通う小学校は有名な名門校。

自分で言うのもなんだが、ここみは学年NO.3の中に入るほど賢い。

さらに、自分で言うのもなんだが、ここみは容姿も整っているほうである。

つまり、言いたいことはここみはモテるのである。

だから、今朝のように下駄箱のなかに手紙が入ってる。なんて初めてではないのだ。




おぉ、手紙。驚きつつもそれを手に取る。

白い無地で飾り付けは一切なし。

立ち読みするのもあれだから、教室行こっと。



5年2組を確認しクラスに入る。

「おはよう。ここみちゃん」

「おはよー」

とみんなに挨拶をして自分の席に座る。

右の隣の席の桜ちゃんも今来たばかりのようでランドセルをおろした。

「おはよー。桜ちゃん」

「おはよう。ここみちゃん」

桜ちゃんはいわゆるお嬢様で言葉遣いや動作が丁寧だ。たしか、どこかの会社の社長の娘だったけ…と考えつつ、また右を見ると桜ちゃんは白い手紙を持って驚いていた。



「そっ、それ」

「机の中に入ってたんだけど、ここみちゃんが入れたの?」

「入れてないけど、私も持ってるの」

と私の白い手紙も見せる。桜ちゃんも驚いていて、目を丸くしている。

2人で見せ合いっこをするが、宛名や誰か送ったかも書いてないところまで全部同じだ。

「ねぇ、桜ちゃん。せーので開けて読まない?」

「そうしましょう」

「「せーの」」

と言い2人同時に手紙を開ける。



ここみさんへ


昼休み、体育館うらに来てください。

話したいことがあります。



2行だけかよ思いつつ、桜ちゃんのも見る。



桜さんへ


放課後、体育館裏に来てください。

話したいことがあります。



「桜ちゃん、どうしよう。同じ人の手紙だ」

筆跡も誰が送ったか書いてないところも一緒なのだ。

「本当。でも昼休みと放課後だけ違うわ」

「それは、かぶらないようにするためだよ」

2人いっぺんに告白なんて、両方に振られるに決まっているのだ。

「このやりかた、ずるくない?」

「えぇ。もし、第1志望のここみちゃんにふられても、私が滑り止めになるということですよね」

そうなのだ。桜ちゃんを前に言いたくなかったが、犯人は私を先に告白して次に桜ちゃんに告白するというセコイやり方なのだ。

桜ちゃんが悲しんでるし、私も怒りでメラメラだ。

「桜ちゃん。私昼休み、こいつに文句言ってくる」

「ありがとう」

そこで、チャイムが鳴り始める。

ヤバイ、準備してない。

急いで準備をしていると、急いで教室に入ってくるやつがいた。

見ると、やはり山田隼人やまだはやと。こいつはいつもギリギリなのである。

「しっゃ!ギリギリセーフ!」

と走って来たのにとても元気なことはいつものこと。毎度ここみは思うのだが、遅刻をしていなくても、ろう下は走ってるのだからアウトじゃないのか。

「いつも言ってるけど、遅刻ギリギリはやめろよ」

と隼人の友達で学級委員の佐藤雄大さとうゆうだいがいう。雄大くんは字がとても上手く、お兄ちゃんもそうらしい。

「ごめんって」

隼人が軽く謝る。

隼人がギリギリにくることは有名なのである。



先生が来て、

「プリントをくばります。上にお兄ちゃんやお姉ちゃんがいる人は受け取らなくていいやつだからね」

と言いくばりはじめる。

これ、ちょっと不公平だな。と思う。

つまり、私の弟の真は受け取らずにすむのに私は受け取る。お姉ちゃんはいつも大変なのである。

他のみんなを見ると、

隼人は弟がいるので受け取り、桜ちゃんは1人っ子なので受け取り、雄大はお兄ちゃんがいるので受け取らない。雄大いいなー。


さぁ、今日も授業が始まるぞ!










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