第3話 会えてうれしかった
美奈子 ストレスを発散させる
私は今、今日一番の勝利をかけて戦いに挑んでいる。
両手で強く握りしめたマシンガンは私の緊張を汲み取ってか、未だおとなしくしている。けど、熱い火を噴く瞬間を今か今かと待ち構えているのが良くわかる。
私は壁に背を預けて、敵の様子をそっと伺った。
私の対角線上、後方に構えている相棒は大きな身体をわずかに竦ませて、どこか不安げに私のサインを待っていた。
それをよそに、私は壁から大胆に身を乗り出し、銃弾を唸らせた。
1発は着弾。相手が怯んだうちに相棒に素早くGOサインを送った。
相棒は「ひぇぇ」なんて言いながら、マシンガンを抱えて私の背後についたようだ。「その装備はなんのためにあるの? あなたの抱き枕じゃないのよ」と辛らつな言葉が口から洩れそうだったけど、私はこらえた。相棒が戦場に慣れるまでは私がカバーしなければ。それがリーダーのつとめ……!
こちらが前進すると、敵の攻撃は激化した。頭を出すタイミングを間違えれば終わりだ。すると、後方に構えていたはずの相棒が、何かにつまずいたのだろう。壁から勢いよく飛び出す形になってしまった。私はとっさに彼のカバーをしようとしたが、……間に合わない!
「ヒット! ひぇぇ、もう撃たないでぇ」相棒が情けない声を上げながら両手をあげて身をすくめた。
「え、もう? まだ1分もたってないよ。って、あ!」応戦しようとマシンガンを構えたが間に合わず、私の迷彩服にも「ぺちっ」と何かが弾ける音がした。
「…ヒット……」
私は半眼でそう申告して、転がったBB弾をつまみ、無言でフィールドを後にした。
初めてのサバイバルゲーム、私と直史は参加したチームで一番に退場になった。
…無念だわ。
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