第一考 堕落について

「欲望に絡め取られて、果てには堕落する」と聞くと、あなたはどう考えるだろうか。


たとえば暴飲暴食を繰り返し、ブクブクと太る。食べても食べても、また食い漁る。

食べる時も食い意地が張ってて、意地汚い。


問おう。

それを現代では美食家というのではないのか。


ではもう一つ。

同性でも異性でもいい。誰かと性行為を繰り返し、飽きることなく交わる。


問おう。

きちんと当人たち同士で話し合って決めたことで、かつお互いを傷つけておらず、そこになんらかの良い感情が通っているのであればそれで良いではないのか。


このように、暴飲暴食を繰り返して太ったなら、食べたぶんだけ働いたり運動すればいい。

このように、性交に溺れてしまうのもお互いの合意や愛があれば、回数と内容は当人たちの都合次第ということになる。


今や現代において、堕落という言葉はあまり機能しなくなっているのかもしれない。


ホームレスやニート引きこもりになってしまった人を助けようという動きがある以上、彼らを堕落しているなどと見なす人はあまりいないだろう。


堕落ではなく、本人の環境や生き方に問題があるという言い方をするはずだ。


ここまで考えていくと、「野蛮」という言葉が、いっそう奇妙に覚えてくる。


原始的で動物的な生き方は、怠惰で堕落したものではないのではないか。


今日の僕はそう考えた。

あなたはどう思うだろう?

一度考えてみて欲しい。


これにて第一考を終える。

次回は、「性欲について」だ。


欲望を解放すると、人はどうやら人は楽になるということを論じていく。

是非楽しみに待っていてほしい。


8月中旬、篠突く雨が宙を満たす頃。


草々不一。

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